第2部 風のアルビオン
第6章 白の国
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朝にならないと出港できませんよ!」
「どうしてだ?」
「アルビオンが最もここ、ラ・ロシェールに近づくのは朝です!その前に出港したんでは、風石が足りませんや!」
ウルキオラは『風石』の存在も、本の知識から把握済みであった。
「子爵様、当船が積んだ『風石』は、アルビオンへの最短距離分しかありません。それ以上積んだら足が出ちまいますゆえ。したがって、今は出港できません。途中で地面に落っこちてしまいます」
「『風石』が足りない分は、僕が補う。僕は『風』のスクウェアだ」
船長と船員は顔を見合わせた。
それから船長がワルドの方を向いて頷く。
「ならば結構で。料金は弾んでもらいますよ」
「積荷はなんだ?」
「硫黄で。アルビオンでは、今や黄金並みの値段がつきますんで。新しい秩序を建設なさっている貴族の方々は、たかねをつけてくださいます。秩序の建設には火薬と火の秘薬は必需品ですのでね」
「その運賃と同額を出そう」
船長はこずるそうな笑みを浮かべて頷いた。
商談が成立したので、船長は矢継ぎ早に命令を下した。
「出港だ!もやいを放て!帆を打て!」
ブツブツと文句を言いながらも、よく訓練された船員たちは船長の命令に従い、船を枝に吊るしたもやい網を解き放ち、横静索によじ登り、帆を張った。
戒めが解かれた船は、一瞬、空中に沈んだが、発動した『風石』の力で宙に浮かぶ。
帆と羽が風を受け、ぶわっと張り詰め、船が動き出す。
「アルビオンにはいつ着く?」
ワルドが尋ねる。
「明日の昼過ぎには、スカボローの港に到着しまさあ」
船長が答えた。
ウルキオラは舷側に近づき、地面を見た。
『桟橋』……、大樹の隙間に見える、ラ・ロシェールの明かりが、ぐんぐん遠くなっていく。
結構なスピードのようだ。
ルイズがウルキオラに近寄り、肩に手を置いた。
「ねえ、ウルキオラ、腕は大丈夫?」
ルイズが心配そうにウルキオラの顔を覗き込む。
「ああ、問題ない」
ウルキオラは無愛想に答えた。
「そう…ねえ、ウルキオラ…」
ルイズは俯きながら言った。
「なんだ?」
ウルキオラはそんなルイズを見つめながら言った。
「あ、ありがとう…さっきは助けてくれて」
真っ赤に顔を染めながら言った。
「気にするな…お前を守るのが使い魔の役目なのだろう?」
「あ…」
ルイズは真っ赤になった顔をもっと真っ赤にしてウルキオラを見つめた。
ルイズはなんでウルキオラと話すと心臓が跳ね上がるのかわからなかった。
ウルキオラはウルキオラで、先ほど襲撃してきた男のことを考えていた。
(先ほどの人間…魔力の質があいつ
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