第一章
str4『星無き夜のアリア@』
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型をスキンヘッドにしているその男からは、どこか西欧のマフィアのような印章が。
だがそれ以前に――――器の大きそうな、男だった。
「俺はエギルと言う者だ。キバオウさん。あんたの言いたいことはつまり、元βテスター達がニュービーの面倒を見なかったから戦死した。その責任を取って賠償・謝罪しろ、ということだな?」
「そ、そうや」
エギル、と名乗った男とキバオウの間には、頭二つ分近くの身長差がある。それに気圧されたかのようにどもったキバオウだったが、すぐに勢いを取り戻してわめき散らし始めた。
「しかも唯のニュービーとちゃうで。皆他のMMOならギルドのトップも張っとったベテランや! アホテスターどもが情報やら金やらアイテムやらを分けとれば、死なずに済んだ二千人や! アイツらが生きとれば、ここには十倍の人数が……ちゃう。とっくの昔に二層も三層も上まで行けとったはずや!!」
「金やアイテムはともかく、情報ならあったと思うぞ」
しかしエギルは動じずに、懐から一冊のパンフレットを取り出した。表紙には、丸い耳と左右それぞれ三本の髭を図案化した、どこか某夢の国のロゴマークを彷彿とさせる《鼠マーク》。
あれは――――クロスともβ時代から付き合いのある情報屋、《鼠》のアルゴのつくったガイドブックだ。
「このガイドブック。あんたも貰っただろう。ホルンカやメダイの道具屋で無料配布されていたものだ」
「もろたで。それが何や!」
キバオウは話の論点が見えずにイライラしているのか、刺々しい声で返す。
「このガイドは、俺が新しい村や町に着くと、必ず道具屋に置いてあった。情報が早すぎるとは思わなかったのかい」
「せやから、それが何やっちゅうねん!!」
「このガイドにのっている情報を提供したのは、元βテスター達以外に有り得ないってことだ」
エギルがそれを口にした瞬間。場が、騒然とし始めた。βテスターたちが情報を独占している、という共通認識が、早くも崩れ去ったのだから。
余談だが――――エギルの言っていることは正しい。
他のβテスターたちはどうだったのか分からないが、クロスは少なくともアルゴが攻略本を作る際の情報提供に協力した。そこまでβテスト時代の情報をたくさん知っているわけではないクロスだが、記憶力はそこそこいい方だと自負しているため、クリアしたクエストや知っていることならかなり詳しく提供できたのでは、と思っている。
まぁ……アルゴがその情報に対してどう思っていたのかは分からないが。いつでものらりくらりと話題を回避し続けるアルゴとの会話を、クロスは苦手に感じていた。ただでさえ相手が何を考えているのか分からないのに、彼女の場合余計に何を考えているのかわかりづらい。一度など彼女の冗談を真に受けてしま
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