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山の人
第三章
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 亮子はいぶかしむ顔になって首を傾げさせた。
「一体誰の話なのよ」
「鳥だよ」
「鳥!?」
「ほら、あれ」
 ここで彼は上を指差した。その指差した先には電線があり数羽の雀達が並んで止まっていた。とりあえず二人の他にこの場にいるのは彼等だけであった。
「あの雀達がね」
「話してるっていうの?」
「うん、ほら昨日うちのベランダにいた猫だけれど」
「あの白いペルシャ猫ね」
「あの猫向かいのマンションの太田さんのところの猫なんだって」
「そうだったの?」
 これは昨夜二人が夕食を食べている時に不意に家のベランダに出て来た猫だった。二人がその猫に気付いて近寄ろうとしたらもう何処かに行ってしまっていた。ペルシャ猫で高価な様子だったのだがそれでも猫らしい素早さは健在だったのである。
「それがちょっと家を脱走してね」
「家猫だったのね」
「結構いたすら猫らしいね」
 彼は雀達の方を見ながらまた亮子に話す。
「キャットフードしか食べなくても家の中で悪さばかりしてね」
「ふうん。ペルシャ猫でもそうなのね」
「その辺りは猫それぞれみたいだね」
 また言う宗重だった。
「まあ太田さんのところは飼い猫の姿が見えなくて大騒ぎだったらしいけれどね」
「だったのね」
「結局あの後家に帰ったんだって」
「家に?」
「すぐにね」
 まだ上を見上げている。

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