第十四章 水都市の聖女
第三話 神槍
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視界がブレる。
直感的に気付く。
―――巻き込まれる!?
六合大槍封閉の基本―――?。
内から外へ敵の攻撃を払う単純な技―――だが、それを振るう者があの李書文であるのならば話は違う。かの魔拳士が振るう長槍は、あらゆるものを巻き込み噛み砕く竜巻と成る。
鎧を砕き肉を抉る―――その直前、士郎は自ら虚空へと身を躍らせた。
強力なストライカーに蹴り飛ばされたボールのように吹き飛ぶ身体。常人ならば訳が分からぬうちに地面に叩きつけられるだろう。糸の切れた凧のように回転しながら空を飛び視界が回り天地が交じり合う中、しかし、士郎は敵の姿を見失わない。
派手に吹き飛ばされてはいるが、咄嗟に引っ張られる方向へと飛んだため、槍に巻かれた事によるダメージは軽微。そして、自ら飛んだ事によりも、単純に槍に弾かれたよりも飛距離はある。
つまり、例え奴であっても、この距離ならば、詰めるに一呼吸はいる。
ならば―――。
「I am the bone of my sword」
投影していた黒弓の弦に手を添え―――。
「―――I am the bone of my sword」
―――引き絞られた弦に番えられた捻れた剣が矢へと変化する。
吹き飛び回る身体。細めた視界に映るのは、身体が高速に回転していることからぐにゃりと原型を留めていない。宙を回転しながら矢を放つ。可能不可能といった話ではなく、もはや笑い話だ。
弓を構える事が出来れば十分に賞賛の対象。
弓から矢が放つ事が出来れば奇跡。
矢が飛ぶことが出来たならば、それはもはや御伽話。
例え李書文であっても―――これならばッ!!
「偽・螺旋剣―――ッ!!」
解き放たれた捻れた矢は、弦から離れた瞬間音速を超え、空間を捻り切りながら真っ直ぐ李書文へと迫る。その姿は、まるで宙を漂う水と風が捻れ重なった巨大な竜巻。草原を削り迫る竜巻―――否、そんなものとは比べ物にならぬ脅威が、鋭い殺意と撒き散らしながら襲いかかってくるのを目にした李書文は、恐怖に顔を引きつらせ―――ることなく、口角を持ち上げた。
それはそれは―――楽しそうに。
微かに開かれた口内は、まるで吹き出る鮮血のように赤く、緋く―――否応無しに、見る者の心胆に怖気を走らせる。
「……ッカ―――呵々カカ、カカカカッッ―――邪嗚呼アアああアあぁぁぁぁっァッ!!」
―――そして、甲高い金属音と共に爆発の重低音が入り混じる独特な音が
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