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剣の丘に花は咲く 
第十四章 水都市の聖女
第三話 神槍
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だが、干将が槍に触れた瞬間身体が吸い込まれる感覚を得る。
 (ナー)―――敵を押さえつける為の動作だが、李書文が振るえば勢いの余り地面に叩きつけられてしまう。
 このままでは地面に叩きつけられ、今度こそ槍の餌食となってしまう。
 

 そう―――このまま剣を握っていれば。


「―――むっ!?」

 
 李書文の口から驚愕の声が上がる。
 巻き込まれる干将を、士郎は手放した。支えを失い干将は地面に叩きつけれる前に空へと向かい飛んでいく。

 ―――前へ。

 士郎が距離を詰める。しかし、直ぐさま李書文は槍を横に振る。横腹に槍の柄が当た―――。

「ッラア!!」

 左に握る莫耶を上から叩きつける。高速で回転するドリルに触れたかのように、莫耶と槍の間に激しく火花が散り―――身体が外へと弾かれる前に手を離す。
 莫耶が回転しながら明後日の方向へと飛んでいく。

 ―――前へ。

 両手は空。
 李書文は必勝を確信しながら槍を振るう。
 下へと叩きつけられた槍を巧みに操り、士郎の足を刈る。
 受ければ足が折れるか地面に転がされる。
 跳んで避ければ動けない宙で槍に貫かれる。
 どちらにせよ、敗北は逃れられない
 李書文の口元が歪み―――

「っ!?」

 ―――凍りつく。

「雄々ッ!!」 

 再度投影した干将でもって、振り払うように槍を捌く。槍に剣が触れた瞬間手を離し、干将が弾け飛ぶ。稼いだ時間はごく僅か。
 だが、それで十分。

「破ァ嗚呼アアっ!!」

 左手の莫耶を振り下ろす。
 莫耶の白亜の刃が李書文の首へと迫る。

 獲った―――っ!

 確信を抱いた―――その瞬間。

「―――阿呆」
「ッ?!」

 空を切る刃。
 前へと踊る身体を強引に引き戻し、顔を上げる。
 眼前にいた筈の李書文はそこになく。

「―――っく」

 後方。
 槍の間合い―――そこに槍を構えた(李書文)の姿があった。
 
 ―――あの一瞬で!?

 莫耶を後ろに下がって避けた。
 だが、それをどうやってやったのかが理解出来ない。
 歩法の一つだろうが、何をどうしたのかが分からない。
 分からないのは、相手の実力故だろう。
 いったい何度目だろうかの戦慄が走り。

「呆けるには早いぞ」
「―――ッ、お」

 眼前に迫る銀線。
 気付いた時には既に身体は動いていた。
 踏みとどまっていた足の力を抜き、前転するように突き出される槍の穂先を避ける。
 ガリガリと背中の鎧の一部を削り取る音を耳にしながら、士郎は急死に一生を得たことを知る―――が、

「呵々―――甘い」
「ッ!? グ、ぎっぃ」

 内蔵が捩れる違和感と共に
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