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剣の丘に花は咲く 
第十四章 水都市の聖女
第三話 神槍
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開くと、口の端を歪ませた。

「クハハハっ。これは傑作。お主導師―――いや、魔術師か。まさかこのような魔術師がおるとは想像の他であったは。さて、ならばその双剣も、何かの魔術で取り出したか……良いぞ。儂も数多の死合を受けた身であるが、お主のような魔術師との死合は初めてだ」
「……何故、俺が魔術師だと」
「まあ、これも長年の勘というところか。それに言うたであろう。長い間武の世界に居るば、様々な知識が知らず得ているとな。しかし今はそんな事はどうでもよかろう。くだらぬ話はこれで終わりだ。今からは―――」

 槍を腰だめに構えた李書文の全身から気が迸り、霧雨が李書文を中心に爆発したかのように弾ける。

「―――これで語ろうぞ」
「―――ッ?!」

 士郎が飛び込むように真横に飛ぶ。唯の勘であった。嫌な予感等そんなものを感じたわけではない。ただ、知らず足が地面を蹴っていた。そのため着地の事など頭の片隅にさえない。ただ、その場からただ離れる為。その判断が正解だったと士郎が分かったのは、地面を転がる勢いで持って立ち上がった際に見た光景。

「チィッ!?」
「―――避けるか」

 先程まで士郎が立っていた位置に穂先を突き立てた李書文が、ジロリと士郎を見ながら歯を見せる。
 一瞬にして丘の上を下り槍を繰り出した。その一連の流れを士郎は全くといって気付かなかった。李書文と士郎の間には、有に三十メートル以上は距離があった。それが一秒もなく詰められた。縮地の一つだろうが、もはや武術というよりも魔法。
 避けれたのは唯の偶然。
 次はない。
 だから―――。

「ッ雄々オオオオォォォォォォ!!」

 ―――前へ。
 
 干将莫耶を握り締め、一息に間合いを詰める。
 既に槍の間合い―――李書文が動かない筈がなく。

「―――ッ?!」

 合わせるように眼前に突き出される穂先。
 身を切り裂くような風切り音を響かせながら、迫り来る点?。
 無理に避ければ体が崩れ、二度目の突きを躱す事は不可能となる。
 剣で受ければ最初と同じ。地面に叩きつけられるか弾き飛ばされるか、どちらにせよ追撃を躱す事は不可能だ。
 ならばどうする?
 避ける事も受ける事も不可。
 どうしようもない?
 
 ―――否。

 否だ。
 確かに唯の剣士ならばそうだろう。
 だが、衛宮士郎は剣士でもなければ拳士でもなく魔術師である。
 ならば―――方法はある。

 さあ、撃鉄を上げろッ!
 
 魔術回路に魔力を叩き込めっ!

 重要なのは正確さと―――何より速さッ!!

 早く―――速く―――疾くッ!!


「――ッ嗚呼!!」


 眼前に迫った刃を下から切り上げるように右手に握る干将でもって払いのける。
 
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