第十四章 水都市の聖女
第三話 神槍
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々の勘の良さよ。あのまま立ち上がっておけば、そのままグサリだったぞ」
丘の斜面にある士郎が転がってきた跡の始点に、槍が突き立てられていた。
「……今のは」
剣が槍に触れた瞬間、何かに引っ張られた感覚があった。何かに巻き込まれるように身体が捻れ、そのまま地面に叩きつけられた。
「サーシャの怪我はこういうことか……」
短剣を握っていた左側の腕の関節が全て外れていたのは、サーシャが槍を短剣で弾いた際、先程のように引っ張られたからだろう。士郎は無意識のうちに流れに逆らわずに流れに身を任せたことから、脱臼などはしなかったが、代わりに地面に叩きつけられた際の威力はその分増えていた。
微かに歪む視界に顔を顰めながら、士郎は李書文を睨み付ける。
「六合大槍……封閉の基本」
「―――ほう」
士郎の呟きに、李書文は軽く目を開くと嬉しげな声を上げた。
「八極門の者ならば気付くだろうとは思うておったが、一度で見抜くか」
「?は内から外へ払い、拿は外から内へ抑える。そして扎で突く、だったか?」
「そう。それこそが六合大槍基本の三法よ」
李書文は士郎に頷きながら槍を構え直し、鋭い呼気と共に槍を三度振るう。
抉れ、捻れ、裂かれる音が響く。
遠く離れた位置からでも、槍に捩じ切られた悲鳴が聞こえ、宙に浮く細かな霧雨が、槍に巻き込まれ長大な竜巻のような渦となる。
「他は知らんが儂はこれだけしかしらん。どうも儂は型とやらが見せかけの舞踊のように思えてな。昔からこの三法のみを繰り返してきた」
槍を横に払い、渦を掻き消すと、李書文は槍を持ち直した。
「さて、続きといこうか。まさかこれで終わりというわけでもあるまい」
「…………」
士郎はチラリと視線を横に向ける。サーシャは未だ地面に横たわったまま。動きだす気配は感じられない。
いや、例えサーシャがこの場から逃げたとしても、この男から簡単に逃げられるとは思えない。
逃げようと背を向けた瞬間背中を槍で突かれる姿を容易に想像できた。
深く息を吸い、ゆっくりと吐き出すと、両手に握る干将莫耶を構える。
「……ふむ。先程から気にはなっていたが、貴様のその手にあるのは、もしやあの干将と莫耶ではないか?」
「―――さて、それはどうだろうな?」
「呵々、別に探りを入れておるわけではない。儂も長いこと武の世界に生きておると、知らず色々と知識が得ておってな。少しばかり不思議に思うただけよ。儂の知る限り、その双剣の使い手に、お主のような使い手は居らぬはず。それに、お主何処から剣を取り出した? 何処かに隠し持っておったとは思えぬが……」
じろじろと士郎を見回していた李書文は、何かに気付いたように軽く目を見
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