第十四章 水都市の聖女
第三話 神槍
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「――――――ッ」
前には殺意を抱き李書文。
背には傷つき倒れるサーシャ。
「―――ォ」
引ける筈がなく。
引くことは叶わない。
「――ォオ」
ならば―――。
「―オオ」
対する敵は李書文。
本物?
偽物?
同じ名を持つだけの別人?
「オオオオォォォォォォ―――」
―――っは。
どれであっても関係などない。
偽物でも本物でもやることは一つ。
―――前へと―――ッ!!
「―――雄々ォォォォッ!!」
―――出るだけだッ!!
「呵々―――ッ!!」
唯の一歩で三十メートルはあった間合いの半分を踏み潰す。
向かう先へに立ち塞がるは三メートルはあるだろう長槍を腰だめに構える嗤う老人。
舌なめずりをする餓虎の如く歪んだ笑み。
飢えていたのだろう。
何に?
決まっている。
「―――良き気迫ッ!!」
敵にだっ。
「貴様の研鑽―――篤と味わわさせてもらおうッ!!」
伸ばされる長槍。
殺意の先が目指すは人体急所の一つ―――水月。
―――疾いッ!?
尋常な速さではない。
突き出される穂先が歪んでいるように見える速度。
ただ突くだけが必殺となりうる一撃。
喰らえば死は必至。
常人―――否、達人と呼ばれる者でも自分がどうやって殺されたか分からないまま死ぬだろう。
だが、幸か不幸かこの程度ならば―――。
「ッ―――破ァ!」
―――見慣れているッ!!
既に両手には投影した干将莫耶。
歩みを阻むと突き出される穂先を左手に握る莫耶にて切り払い、同時に敵の左側面に滑り込むように入る。そのまま右手の干将を振り下ろせば―――。
「―――ッガ―――ぁ?」
―――衝撃。
右から生じた波が、瞬時に左へと抜ける。
肺の空気が押し出され、一瞬視界に星が散る。刹那の星が消えた後、天地が動いている事に気付く。
右に地―――左に天。
―――倒―――れている?!
気付くと同時に霧雨に濡れた草を地面に押し込むように右手を伸ばし一息に立ち―――ッ!?
「―――ッく」
―――上がらずにそのまま丘の斜面を転がり、距離を取った。格好など気にしている場合ではない。
一気に数十メートルの距離を転がり、十分な間合いが取れると転がる勢いを利用して立ち上がる。
千切れた草の欠片が服や肌に張り付いた姿で、間合いを離した位置で敵と相対し、転がる間も離さずにいた干将莫耶を構え、相手を睨みつけた。
「呵々、中
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