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山の人
第二章
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ね」
 友人はふとこのことを指摘した。
「どうやら」
「そうね」
 また言われて考えだす亮子だった。いささか流され易いというか乗り易いようである。
「どうやら。毛深いし」
「毛深いの」
「まずは髭よ」
 夫婦だからこそわかる話だった。
「もうね。ちょっと剃らないとね」
「顔中髭だらけとか?」
「パバロッティみたいになるのよ」
 ここで話に出したのは有名なテノール歌手であった。
「それこそね」
「パバロッティねえ」
 友人も彼のことは知っていた。背快適に有名なテノールであったから当然と言えば当然である。あの髭だらけの顔は一目見れば忘れられないものがあるのだった。
「あんなふうになるのね」
「それで胸も腕も」
 亮子はさらに踏み込んで話す。
「脚だってね」
「毛だらけなのね」
「髪の毛だってね」
 話は全身に及んでいた。
「もうね。何処もかしこも」
「多いの」
「多くて硬いの」
 硬くもあるのだった。
「凄い剛毛で。結構大変なのよ」
「ふうん。熊みたいな感じなのね」
「そういうこと。トランクスを突き破らんばかりで」
「うわ・・・・・・」
 これには流石に絶句する友人だった。
「そこまでいくのね」
「いくのよ。もう凄いから」
「日本人離れしているわね」
 友人は思わず言った。
「それって」
「それもあるし」
「おまけにその自然への強さね」
「何者かしら」
 自分の亭主のことを腕を組んで言い出す亮子だった。
「本当に」
「熊とかみたいだけれど」
「熊ねえ」
「都会的ではないわね」
 友人はこのことは感じ取っていた。
「はっきり言ってね」
「そうね。コーヒーは似合わないわね」
「私もそう思うわ」
 ここでは意見が一致した。
「あの人にはね」
「自然ね」
 亮子はここに注目した。

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