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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
追憶  〜 帝国歴486年(後篇) 〜
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程までの困惑は無い、私も何かがおかしいと感じた事で安心したのだろう。ふむ、この男、自信が無いだけである程度の能力は有るのかもしれない。だとすれば情報部長には適任かもしれんな。多寡を括るような奴には情報部長は務まらん。

「それと、第三次ティアマト会戦の戦闘推移が知りたい、そこから何かが分かるかもしれん」
「総司令部に直接要求しましょう、閣下のお名前をお借りしますが」
「それで良い、変にコソコソすれば向こうを刺激するだろうからな」
「はい」
それを機にヘルトリングは席を立った。

どうも妙だ、何かがおかしい。得体のしれない何かを踏みつけた様な気がする。踏んだのが汚物なら良い、腹は立つが時間が経てば忘れるだろう。だが踏んだのがそれ以外の物なら一つ間違うととんでもない事になる、そんな感じがした。気が付くと何時の間にか副官が部屋に戻っていた。妙な顔で私を見ている。ふむ、ソファーに座ったままだったか……。やれやれだ、ゆっくり考える事も出来ん。


全てが明らかになったのは三日後、十二月七日の事だった。
「つまり、全てはヴァレンシュタインが脚本を書きあの九人がその通りに動いたという事か」
「そういう事になります」
ヘルトリングが執務机の前に立っている。今日はシュミードリン少佐も一緒だ。正式な報告、そういう事なのだろう。

ミュッケンベルガーが戦闘指揮を執れない状態になったのは事実だった。但し、人事不省ではなく心臓発作によるショック状態になったらしい。ミュッケンベルガーは心臓に疾患が有ったのだがそれを隠して出兵していた。ショック状態になったミュッケンベルガーに代わって遠征軍の指揮を執ったのはメックリンガー少将だった。

新参の少将に他の参謀達が自ら指揮権を委ねるわけがない。メックリンガーが指揮権を得る事が出来たのにはヴァレンシュタインの工作が有ったらしい。但し、その工作は非合法なものであったようだ。ヴァレンシュタインは責任を取って軍を辞めたいとミュッケンベルガーに書状を送っている。もっともミュッケンベルガーはそれに対して反対の様だ。そしてミュッケンベルガーも退役を宣言している。

「ミュッケンベルガー元帥が退役されるとなると宇宙艦隊司令長官はどなたが就任されるのでしょう」
ヘルトリングの発言は質問と言うよりも呟きに近かった。おそらく後任者が思いつかない、そんなところだろう。
「さて、何とも言えんな。第一退役が許されるかどうかも分からん。ミュッケンベルガー元帥は陛下の御信任も厚い、或いは慰撫されてその地位に留まるという事も有り得る」
エーレンベルク元帥、リヒテンラーデ侯もミュッケンベルガーの留任を望む可能性は低くない。

「しかし戦場には……」
「出られんだろうな、代わりに戦場に出る人間を副司令長官に任命しミュッケンベルガ
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