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エクシリアmore −過ちを犯したからこそ足掻くRPG−
第二十話 そしてサナギは蝶になる
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と、イバル!? 急に走り出すな。この猪突猛進が。
 イバルが吊り橋を半ばまで行って、何かを拾い上げた。

「おい! これ、ルタスの簪じゃないか!?」

 追いかける。イバルから受け取った簪は君影草のモチーフ。確かに私がエリーゼに贈った物だ。

 吊り橋を渡って入れる岩孔は一つだけ。メイスとエリーゼがいるとしたらあそこしかない。

「よくやった、イバル。お手柄だ」

 イバルの肩を叩いてから、吊り橋を渡り切った。一拍遅れてイバルが、その後からローエンとクレインが追いかけて来た。

 重い鉄扉を開け、坑道に全員で踏み込んだ。

 中は複雑な造りだったが、どの道がフェイクでどの道が本命かを見分けるのは難しくなかった。これでもダンジョン攻略には慣れているんだ。こんな分史世界も任務でいくつも経験したんだから。

 灯りが見えた。その下にある常盤色も。やはり連れて来られていたのか、エリーゼ。

「エリーゼ」

 呼びかけると、エリーゼは顔を上げた。幾筋もの涙の跡。
 理由を尋ねる前に、エリーゼが腹に縋りついてきた。

「うわああああん! あああああん…っ! ヴィクトル、ヴィクトルぅ…!」
「遅くなってすまなかった。もう大丈夫だよ、エリーゼ。怖いことはもう――」
「ティポが、ティポがぁ…!」
「ティポ?」

 イバルや、クレインやローエンと顔を見合わせる。
 ローエンが行って、床に転がったティポを拾い上げた。

『はじめまして。まずはぼくに名前をつけてねー。はじめまして。まずはぼくに名前をつけてねー。はじめまして。まずはぼくに名前をつけてねー。はじめまして。まずはぼくに名前をつけてねー。はじめまして。まずはぼくに名前を――』
「これは……」
「め、メイス、がっ、ティ、ティポから、何かっ、抜き取って…ずっと、そうなんです!」

 ティポが増霊極(ブースター)だという事実自体は知っていた。ただ、あまりにティポが普通にしゃべるから、忘れてしまっていた。エリーゼとティポの繋がりの正体を。
 まさかこんなにも深く依存しているとは思わなかった。これが〈俺〉も知らなかったエリーゼの一面。

「貸せ!!」

 イバルがローエンからティポを引ったくり、前後に乱暴に揺さぶる。

『ぼくの名前はティポだね。よろしくー』
「おいこらヌイグルミ! いつもの威勢はどうした!? ルタスが目の前で泣いてるだろうが! 慰めてやらなくていいのか!」
『なぐさめたって、エリーゼが独りぼっちなのは変わらないよー』
「お前はッッ!! ティポという名前で、ルタスのことはエリーと呼んでいて、何で出来てるか分からないヌイグルミで、生意気で、…っこいつの…ルタスの友だろうが! ずっと、ルタスと、共にいたんだろうが!」
「イバル
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