暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章 群像のフーガ  2022/11
3話 夕時の一幕
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を纏ったヒヨリに先導される形で通りを目指した。
 昼下がりということもあり、通りを歩くのはNPCもプレイヤーも数が多い。
 ヒヨリは然程でもないから気にならないようだが、俺に向けられるプレイヤー達の視線が痛い。もし視線に干渉力が備わっていたならば、俺は今頃刺突(ピアース)ダメージの集中砲火でHPを根こそぎ削られていたことだろう。
 とりあえず、よく利用するNPCベーカリーで手早く1コルの黒パンを三つ購入する。
 もうすこし背伸びすれば、3コルのバゲットもどきや5コルのコッペパンもどきにありつけるのだが、ヒヨリが痛く気に入っていることもあり、その意思を尊重する形をとって倹約させてもらっている。俺は上手く食べるコツを知っていたのであまり気にはしない。

 ………さて、どうせ向かうなら噴水広場で時間を潰しておいた方が後に楽ができる。ベンチもあると思ったし、そこで休みがてら黒パンをいただく事としよう。


「………あ、燐ちゃん。あれってキリトくんだよね?」


 ヒヨリが指差した先を見ると、ベンチに腰掛けるキリトと元・寝袋女が目に入る。
 救助されていた方は既に意識を取り戻せたようで、間を隔てていながらも同じベンチに腰掛けているようだった。そしてどういうわけか、二人とも黒パンを手にしている。

 これ、どう見ても声を掛けられないだろう………


「キリトくーん、こーんにーちはー!」


 だが、そんな実質不可侵なエリアにもヒヨリは臆することなく、というより何も気付かぬが故に特攻をかけるのだった。
 残された俺は、溜め息を吐きつつヒヨリの後を追い掛けるしかない。申し訳ないが、恨むならヒヨリを恨んでくれと、できればこの剣については触れないでくれと、祈るばかりだった。


「ヒヨリ? ………ということは………」
「………よ、よお………今朝ぶりだな………」


 一応挨拶をするものの、大切な時間を侵害してしまったであろう罪悪感と、この剣の存在による羞恥心が強過ぎて平静を保てない。そもそも他人付き合いが苦手な俺にしてみれば、これ自体が立派な苦行である。一刻も早く借家に戻りたい。


「やっぱり、そっちもトールバーナに居たんだな」


 しかし、流石はキリトといったところか。相手の事には詮索をしないスタンスは一切の揺らぎを見せない。世間話を切り出す口上も俺の中では最高点である。おかげで心に若干の余裕が現れるのを確かに実感できた。


「………まあな。キリトはこれから昼か?」
「そうなるかな」


 現在の時刻は午後三時四十分。一般的には遅めなのだが、前述した通り日中はNPCが最も活発的に屋外に出て行動する――――NPC自体は日中に仕事や外出しているに過ぎないが――――時間帯であり、それは同時に
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