第1章 群像のフーガ 2022/11
3話 夕時の一幕
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が行おうとしていたのは、装備用色彩変更アイテムによるデザイン加工である。
コートが可愛くないという一言から、《セティスの祠》でドロップしたカラーリングアイテムを使うことになった次第だ。確かに、このデザインはヒヨリには似合わないし女性好みとは言い難い代物だっただろう。だが装備の性能上から頼らないわけにもいかず、妥協案として色彩変更と相成ったのである。
………だが、結果は予想を上回る出来だった。
黒い金属と黒革のロングコートは、白銀の意匠を持つ純白へと転身を遂げた。
何かの血痕を思わせる赤のグラデーションも白の色彩ステータスに飲み込まれて跡形もなく消え去り、追加で使用した《継ぎ足し布》――防具屋のクエストで入手可能。駄々をこねられ、休憩を潰されてまで入に手れた――によって端の擦り切れさえも消滅してしまい、もはや装備の名前以外は原型を留めていない。名称や性能こそ変化していないものの、レア防具のアレンジを第一層でやってのけてしまった事になる。この為に《裁縫》スキルを取るのだから、初心者の向こう見ずは空恐ろしい。
「………わあ、できたよー!」
「そういう効果だからな」
完成を確認し、飛び跳ねながら喜ぶヒヨリに簡素な事実だけを伝えるが、自分もゲームを始めた頃はこういった色鮮やかな感動の目白押しだったのだろうな、と振り返る。
「ねえ、ちょっとだけこれを着て外を歩いてみていい?」
「………外ね」
時計を確認すると午後三時を示していた。少し早いが、例のパン屋で買い食いしながらでも時間を潰せば良いだろう。
………で、要望である装備の着用だが、ドロップ品を継ぎ足し布で自分好みにアレンジしたとでも言えばどうにでもなるだろう。カラーリングアイテムも確率は極めて低いが通常ドロップで手に入る。革や布の防具の形状を変化させる継ぎ足し布の入手方法も広く知られている――――手に入れる余裕のあるプレイヤーがいるかは疑問だが――――ので、多少変わり者扱いされるかもしれないが、防具面の言い訳はいくらでもあるのだ。そして、この言い訳で俺は《自ら望んで厨二装備を纏う》痛い剣士となるわけだ。
同時に武器は既に擬装をやめているのだが、無我夢中で狩っていたらドロップ品がいつの間にかストレージに入っていたとでも言えばよい。
「よし、少し出てみるか」
ソファから腰を上げ、新たな鞘を腰に佩く形で身に付ける。
ヒヨリの前だけで済まそうとしていたものの、鞘の更新によって本来の鞘が消失してしまったので、まさに断腸の思いであったが表情に出さないように努める。こういうのは恥ずかしがったら負けなのだ。
「うん、行こう!」
こうして、純白のコート
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