■■インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ■■
壊れた世界◆自己の非同一性
第五十四話 新たな仲間
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の環構造をもつ化学物質の名称だ。
「三人が上へ進むべきだと主張しました。3Qの戦いを生き残ったのは私を含め二人。もう一人も八十二層のトラップで命を落としました。ここは恐ろしい場所ですね」
ははは、と乾いた笑いを漏らすイワンの口調からは深い悲しみが伺えた。それでも前へ進もうとする彼の決意はいかほどのものか。ミドリは震えるイワンの手をぎゅっと握り、無理矢理に握手した。
「……ありがとうございます。ミドリさんは――あれ、ミズキさんのご兄弟かなにかですか? 姿が大変似ているようですが」
「他人の空似だ。世の中には同じ姿の人間が三人いるって言うが、多分それだ」
「でも、その鷹は彼のものでしたよね」
イワンはミドリの足元に待機するフウカを指さした。ミズキは戦績的にはあまり目立つプレイヤーではなかったため、伝説となった今でも彼の姿を知らない者は多いが、七十五層の決戦で彼を目撃したイワンをごまかしきれるはずはなかった。
「あー、それについては、ええと――非常に説明しずらい事情があってだな。俺は確かにミズキと関わりがあるんだが――とりあえず、俺はミズキ本人ではない。キャラクターネームも違うしな」
「うーん、そうですか。深い事情があるようですので、あまり突っ込まないでおきますね」
「すまない、助かる。ずっと秘密にしておくべき話でもないし、また機会があったら話すよ。あとは――そうだ、シノン。武器は今も短剣だよな」
「うーん――そうね、違うわ。あんまり人前では話せないんだけど――」
そこでシノンはあたりを見渡し、誰も見ていないことを確認すると、クイックチェンジで一つの武器を取り出した。それを目にして、その場の皆は一瞬凍りついた。それはここSAOでは存在しないはずの遠距離攻撃用武器である――
「ゆ、弓……?」
そう、それは簡素な長弓だった。投剣・体術スキルで発動できるチャクラムなど派生武器とは異なり、引くのに十分な力と技術が必要なはずのその武器に対して専用のソードスキルが設定されているのは明らかだった。そして、『射撃スキル』とでも呼ばれるべきそのスキルは、未だに習得条件どころか存在自体知られていなかった。つまり――
「エクストラスキル……か」
或いは、ユニークスキルか。その一言は口に出さなかったが、ミドリはそれがユニークスキルであるような気がしていた。射撃スキルはキリトやヒースクリフのスキルと同様、多種多様な他のスキルとは明らかにかけ離れたスキルだからだ。唯一類似点のある投剣スキルから派生する可能性はあるが、投剣スキルをマスターしたマルバやシリカからも射撃スキルを習得したなどという話は聞かない。ゲームのステータスではなく本人の能力、すなわち反射神経や動体視力といった脳に依存する様々な能力の一つに秀でた者にのみ与えられる、極めて特殊なスキル――ユ
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