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第二章
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第二章

「可愛くないだろ、こいつ」
「そう?いいじゃない」
 しかしここで美佳はタマをいいというのだった。
「この猫ちゃんって」
「いって?」
「だって黒猫じゃない」
 だからだというのである。
「凄くいいじゃない」
「そうなのか?黒猫が」
「黒猫って商売繁盛の生き物なのよ」
 その理由を話す美佳だった。
「関西じゃそう言われてるのよ」
「そうだったのか」
「桃李君それ知らなかったの」
「化け猫じゃなかったのか?」
 彼が言うにはそうだったのだ。
「黒猫って」
「それってあれ?ポーとか鍋島家のあれとかよね」
「ああ、それでだけれど」
 やはりそれであった。彼は黒猫といえばそういうものから思い浮かべたのである。
「違うんだ」
「私はそう思ってるけれどね」
「成程」
 それを聞いて頷く桃李だった。
「そういう話もあるんだな」
「そうよ。それに」
 自分の靴を脱ぎながらにこにこと話し続ける美佳だった。
「この猫ってしっかりしてるじゃない」
「そうか?」
「だって。私達出迎えてくれるじゃない」
「そういえば俺が帰って来る時はいつも」
 桃李はまた彼女の言葉からあることに気付いたのだった。
「玄関にいてくれてるな」
「そうでしょ。それだけ桃李君のこと大事に思ってくれてるのよ」
「家族全員にそうなんだよ」
 彼だけではないというのである。
「出て来たら出迎えてくれるんだよ」
「だったら余計にいいじゃない」
 それを聞いて述べた彼女だった。
「家族思いの猫ちゃんじゃない」
「そうだったのか」
 彼はあらためてタマを見た。一見すると無愛想な顔のままである。その無愛想な顔でそれで彼と美佳を見ているだけである。そうとしか見えない。
 しかし美佳の話を聞くとだった。タマを見る目が少し変わった。
 そうして見ながら玄関にあがる。それで彼女を家の居間に案内する。そこでケーキとお茶で迎えてそのうえで楽しく話す。しかしだった。
 ここでまたタマが出て来たのだ。それだった。
「あれっ?来てくれたのね」
「タマ、また来たのか」
 障子を開けてそのうえで来たのだった。その八分睨みの目で桃李を見続けている。彼を見ながらそっと美佳の方に向かうのだった。
「私の方に来てくれたのね」
「ニャア」
 こう返してきた。それを聞いて桃李に問うた美佳だった。
「何て言ってるの?」
「ああ、多分ね」
 それを聞いて応えた桃李だった。
「そうだって言ってるんだよ」
「そうなの」
「何でかわからないけれどこいつの言葉結構わかるんだよ」
 これは本当のことだった。それがわかる彼女なのである。
「何となくだけれどな」
「何となく?」
「そう、何となくだけれど」
 わかるというのである。

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