第7話「現実とネットゲームのパラメーターは比例することもある」
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グは、たまがいなければ成しえなかった。
「私はパソコンの初歩的な操作を教えただけです。双葉様には天性のハッカー能力があります」
双葉の技術力の発達は驚異的なスピードで、たまも驚きを感じていた。
最初はマウスを動かす事すらまともにできなかった。それが二日程度で全て我が物にしてしまった。
協力したといっても、たまはネットからの膨大な情報量の分析と処理を手助けしただけ。根本的なプログラムの書き換えなどを行ったのは、全て双葉だ。
たまは声のトーンを少し上げて評するが、双葉の眼は冷めたまま。
「意味ないさ。人を傷つけるだけで。……さぁ次はお主の番だ」
そう言って、双葉はたまの耳の接続部にコードを差し込む。ノートパソコンにたまのシステムへと繋がるフォルダが開き、黙々と操作を始めた。
「双葉様」
「なんだ?」
パソコンに目を向けたままの双葉に、たまは静かに告げる。
「銀時様たちに再修理された私には、それ以前の記憶がありません。ですが一つだけ覚えていた事があります。『侍は勇者より大魔王より上に位置する大魔王四天王の一人であり、私の友達』です」
ゲーム機を仮の身体にして生まれた時、自分は無知の赤ん坊だった。
だがなぜかこの言葉だけが《メモリー(記憶回路)》に存在した。
それはまるで自分を護ってくれているような、不思議と暖かさを感じた。なぜそう感じたのか、未だに理解できないが。
それにどうしてその事を今口にしたのかも。何度分析しても解明されない。
この事を聞いて、侍の妹はどう思うだろうか。
たまはほのかな期待を抱いて、彼女の返答を待つ。
<i2596|26801>
「……そうか」
彼女の返答はその一言だけだった。
そして手を止めず操作を続ける。
たまもそれ以上何も言わなかった。
〈すべてのデータを削除しますか〉
データは所詮電子的なまやかしにすぎない。目に見えても触れないのなら幻と同じだ。
その幻が欲しいという奴がいたら、馬鹿馬鹿しく思う。
それは叶えられない願いだ。決して過去へ戻れないのと同じように。
――でも……
〈削除しました〉
たまの中にある『螺鬼』のデータは全て消去した。
だから『螺鬼』のことも、今日まで双葉と関わったことも、たまの記憶には残らない。
データが完全に消えたことを確認すると、双葉は立ち上がり出口へ向かう。
ふと双葉はカウンターに座るたまを一瞬だけ瞳に映す
無機質なモノにあるはずのない感情が芽生えたという《からくり(機械)》。
一度は破損し、データは全て消失した。
だがこの《からくり(機械)》の《こころ(魂)》に刻まれた言葉だけは、消えなかったらしい。
――不変なモノがあるなら、兄者たちの言葉が届いたのな
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