第7話「現実とネットゲームのパラメーターは比例することもある」
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双葉が操るノートパソコンは、とあるゲームを映し出していた。
モンキーハンターのロード画面。そこにあるセーブデータは一つだけ。
それは『プレイヤー:螺鬼』と表記されていた。
〈このデータを消去します。よろしいですか?〉
無骨なフォントメッセージと、肯定か否かの選択肢が表示される。
双葉は躊躇いなく、〈はい〉をクリックした。
〈消去しました〉
「所詮はデータ。クリックひとつで全て消える、か」
さきほどまで『螺鬼』のデータがあった《スペース(場所)》を見ながら、ぼそりと呟く。
「双葉様。本当によかったのですか?」
隣席の緑髪の少女が無表情に問いかける。
「ああ。ずっと保存しておくのも危険だからな。お主の《メモリー(記憶回路)》にある今回のデータも消去させてもらう」
彼女と同じように、双葉も無表情に淡々と告げた。
「私は秘密を口外しません」
「念のためだ。『螺鬼』に関わった記録が残れば、危険が及ぶ可能性がある。只でさえ違法の《からくり(機械)》だそうじゃないか、お主は」
人間に反乱を起こし、江戸中を騒がせた《からくり(機械)》メイドたちは事件の収束と同時に一斉廃棄された。だが実際は闇ルートで廃棄されずに残った《からくり(機械)》たちが今でも存在している。
双葉の隣に座る少女――たまもその一人である。
「わかりました。……双葉様、どうして今回のハッキングをなさったのですか?」
それは数日前。
『スナックお登勢』で働いていたたまの前に双葉が現れ、あることの協力を頼まれた。
命令を従順にこなす事が生き甲斐の《からくり(機械)》は素直に聞き入れたあまり、その目的をまだ聞いていなかった。
双葉は特に表情を変えず、たまの質問に答える。
「バーチャルでの努力なんて意味がないからな。こうしてすぐ消える。形も残らない」
データは目に見えるが、手にとって触ることもできない不確かなモノ。
どれだけ時間を稼いでも、消える時は一瞬だ。それはこの世にあるモノに全て言えることだが、データほど脆いモノはない。
現に今までそこにあった『螺鬼』のデータも、跡かたもなく消えてしまった。
ネットを騒がせたハンターの原型を留めるモノは、何一つ残っていない。完全に削除されたデータが復活することは、もうない。
ある程度の操作を終えた双葉は目線をたまに向け、改まった表情で口を開いた。
「兄者たちにデータの儚さを証明できたのはお主のおかげだ。礼を言う」
『モンキーハンター』のプログラムの情報量は凄まじい。ノートパソコン一台だけではその負担に耐えきれず壊れてしまう。なので、その負担を減らす必要があった。
たまにネット接続することで情報量を分割し、その負担を補うことができた。
つまり今回のハッキン
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