第6話「セーブはこまめにやっとけ」
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鬼の前に立ちはだかるのは『伝説』と呼ばれた男――Mだった。
彼は澄んだ瞳で螺鬼を見据える。
【あんたがどんな手を使って最強になったのかは知らねぇ。だがそんな卑怯な手でチヤホヤされても嬉しくねェだろ】
どんなに努力したとしても、利益のある結果が出なければ意味がない。
勝利の喜びを知っているからこそ、誰もがそれを求めるのだ。
求めるあまり道を外れてしまう者もいる。だが例えそれで勝利を得たとしても、残るのは空しい気持ちだけ。
【リアルじゃ価値はないかもしれねぇが、ただ一つ言えんのはココに俺の『生きた証』が残ることだ】
【生きた証?】
【そうだ。ハンターは俺の生き甲斐。この伝説は俺が苦労して積み上げた結晶。データはその『証』だ。どうしたって誰にも崩せねェよ】
それがゲームであろうと、現実に反映することはないとしても、彼が一つの事をやり通したことに変わりはない。
そうして得たモノは伝説という形になる。偉大な功績は噂として広がり、このゲームで彼を知らないハンターはいないほどだ。
深々と語るMを螺鬼は上目遣いで見ていたが、次第に目線を落としていく。
Mは俯く幼女を見てフッと笑みをこぼした。
【わかってくれとは言わないさ。ただ、この証は永遠に残【なら教えあげるぅ♪この世界で積み上げた『証』がどれだけもろいかをさぁ!】
突拍子もない明るい声がMの演説をブチっと強制終了。
いきなりのテンションの切り替わりに誰もが戸惑い、彼女のリズムについていけない。
【お楽しみをはじめるよ♪】
大鎌を手に螺鬼はふわりと宙に舞い上がる。
そして笑みは黒く染まる。
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彼女が高らかに宣言した直後、Mの――ゲームをプレイしていた長谷川のパソコン画面は砂嵐に乱れていく。
「え?え!?ちょ、何これ??」
事態の急変に追いつけず、パニック状態になる長谷川。
【★☆ブレイクターーイム☆★】
パソコンから聞こえる螺鬼の声。
そして画面一杯に映し出されるドス黒い微笑み。
【バイビ〜♪】
直後、画面はモンキーハンターの大地に立つMを映し出した。
だが安堵したのもつかの間。Mが粉々の粒子となり消えたのだ。
「はっ?!Mが!俺が消えた??!」
慌ててモンキーハンターのスタートメニューを開く。
しかし、そこにMのセーブデータは一切なくなっていた。
文字通り『消えた』。
「オレのデータがァァ!オレの生き甲斐がァァァァァ!!!」
その悲鳴を最後に、長谷川は動かなくなった。
真っ白に燃え尽きた抜け殻のように。
=つづく=
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