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【銀桜】3.モンハン篇
第6話「セーブはこまめにやっとけ」
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鬼の前に立ちはだかるのは『伝説』と呼ばれた男――Mだった。
 彼は澄んだ瞳で螺鬼を見据える。
【あんたがどんな手を使って最強になったのかは知らねぇ。だがそんな卑怯な手でチヤホヤされても嬉しくねェだろ】
 どんなに努力したとしても、利益のある結果が出なければ意味がない。
 勝利の喜びを知っているからこそ、誰もがそれを求めるのだ。
 求めるあまり道を外れてしまう者もいる。だが例えそれで勝利を得たとしても、残るのは空しい気持ちだけ。
【リアルじゃ価値はないかもしれねぇが、ただ一つ言えんのはココに俺の『生きた証』が残ることだ】
【生きた証?】
【そうだ。ハンターは俺の生き甲斐。この伝説は俺が苦労して積み上げた結晶。データはその『証』だ。どうしたって誰にも崩せねェよ】
 それがゲームであろうと、現実に反映することはないとしても、彼が一つの事をやり通したことに変わりはない。
 そうして得たモノは伝説という形になる。偉大な功績は噂として広がり、このゲームで彼を知らないハンターはいないほどだ。
 深々と語るMを螺鬼は上目遣いで見ていたが、次第に目線を落としていく。
 Mは俯く幼女を見てフッと笑みをこぼした。
【わかってくれとは言わないさ。ただ、この証は永遠に残【なら教えあげるぅ♪この世界で積み上げた『証』がどれだけもろいかをさぁ!】
 突拍子もない明るい声がMの演説をブチっと強制終了。
 いきなりのテンションの切り替わりに誰もが戸惑い、彼女のリズムについていけない。
【お楽しみをはじめるよ♪】
 大鎌を手に螺鬼はふわりと宙に舞い上がる。
 そして笑みは黒く染まる。


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 彼女が高らかに宣言した直後、Mの――ゲームをプレイしていた長谷川のパソコン画面は砂嵐に乱れていく。
「え?え!?ちょ、何これ??」
 事態の急変に追いつけず、パニック状態になる長谷川。

【★☆ブレイクターーイム☆★】

 パソコンから聞こえる螺鬼の声。
 そして画面一杯に映し出されるドス黒い微笑み。

【バイビ〜♪】

 直後、画面はモンキーハンターの大地に立つMを映し出した。
 だが安堵したのもつかの間。Mが粉々の粒子となり消えたのだ。

「はっ?!Mが!俺が消えた??!」

 慌ててモンキーハンターのスタートメニューを開く。
 しかし、そこにMのセーブデータは一切なくなっていた。
 文字通り『消えた』。

「オレのデータがァァ!オレの生き甲斐がァァァァァ!!!」

 その悲鳴を最後に、長谷川は動かなくなった。
 真っ白に燃え尽きた抜け殻のように。

=つづく=

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