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青い冠
第一章
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「皆で楽しくやればいいじゃないか」
「ううん」
 フリッツはまだ難しい顔をしていたがそれでももう陥落寸前であった。実際に彼は陥落した。
「じゃあ」
「あっちだぜ」
「ついて来いよ」
「うん」
 ビールを持って友人達について行く。彼等が案内したのは草原の上の方の丘であった。彼はそこに連れて来られたのであった。
「おう、フリッツ連れて来たよ」
 そこには村の若者達と娘達が集まっていた。そしてそれぞれ酒や食べ物を楽しみ踊りを踊っていた。そうして春がやって来たことを祝っているのである。
 皆笑顔である。その笑顔の中にはフリッツが意識しているあの娘のものもあった。彼はそれをすぐに見つけて心の中で微笑むのであった。
「こんにちは、フリッツ」
 その彼女が微笑んできた。マリーネだ。
 赤い髪に栗色の瞳をした可愛らしい女の子だ。白く透き通るような肌にまだ幼さの残る顔立ち、彫はそれ程ではないがそれでも整っていた。
 背はかなり小さかった。フリッツが大柄なのと比べるとかなり差があった。青と白の服がよく似合っていた。
「うん、マリーネ」
 フリッツは彼女に朴訥な声で挨拶をした。
「そこにいたんだ」
「ええ」
 マリーネはにこりと笑った。しかしフリッツははにかんで笑うだけであった。
「そうよ」
「フリッツもこっちにいらっしゃいよ」
 女の子のうちのそばかすの娘が声をかけてきた。
「あんた達もね」
「ああ、わかったよ」
「実はフリッツを連れて来たんだ」
 彼等は口々にこう述べる。
「こいつがさ、ずっと一人でいたから」
「それでね」
「何で一人でいたの?」
「いや、何となくだけれど」
 マリーネの問いにそう答える。フリッツは少し俯いていた。
「特に何も思い浮かばなくて」
「そうなの」
「全くよお」
 若者のうちの一人がしょうがないなといった顔で彼に対して言ってきた。
「相変わらずだな、そういうところは」
「もうちょっと歌とか踊りとかやってみたらどうだ?」
 別の若者も言った。さっき彼をここまで連れて来たうちの一人であった。羽帽子をお洒落に被っている。
「何かいつも野暮ったいんだよな」
「そうそう。大人しいし」
「俺歌も踊りもあまり上手くないから」
 フリッツはそれに応えて言った。
「だから。そういうのは」
「まあ仕方ないな」
「それもそうか。御前は御前で得意なところがあるしな」
「ああ」
 仲間達に答える。実は彼は大きな身体に似合わず手先が器用だ。それで色々と農具を修理したり何かを作ったりしているのだ。それで村では結構重宝されているのである。
「それでね。フリッツ」
 あのそばかすの女の子が彼に声をかけてきた。

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