第七十一話
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にツッコんでいると、何やらキリトの様子がおかしかった。見てみれば、キリトの胸ポケットに入っていたユイが中空を凝視している。無言のまま見開いた目で、いつになく真剣に世界樹を見つめていた。
「どうしたの、ユイちゃん……?」
「ママが……ママがいます!」
「――――!」
心配するようなリーファへユイが返した言葉に、俺とキリト、それにリズは息を呑む。ユイにとってのママと言えば、もちろん一人しかいない。そもそもこの世界に俺たちが来た理由である――アスナ。
「……ッ!」
「ちょ、ちょっと……キリトくん!」
リーファの制止する声も聞かずに、ユイの見ていた世界樹の上空へとキリトは飛翔していく。止めることも出来ない猛スピードで、瞬きした瞬間にキリトの姿は地上から消え失せ、その頃にはもう空中に黒点と化していた。
「なんなのよ……もう!」
「リーファちゃん!」
リーファも文句を吐きつつその翼を展開すると、飛翔してキリトを追っていく。俺もキリトを追うべく翼に力を込めたが、その前に地上に残る二人に向き直った。
「二人を連れ戻してくる、リズとレコンはここで待っててくれ!」
「え、ええ」
「何が何だか……」
二人には悪いが補助コントローラーのリズとレコンでは、キリトのスピードについて行く事は出来ない。アスナやリーファのことはそれぞれ心配だろうが、ここは俺に任せて空中へと飛翔する。
キリトやリーファほど空中戦闘は慣れていないが、直線の速さならば負けてはいない。障害物もないため遠慮なく最高速を出すと、そびえ立った塔を越して雲海の直前でリーファに合流する。……理由は分からないが、リーファは少しスピードを落としていたようだ。
「リーファ?」
「……キリトくんを追うよ!」
怪訝な表情をしてリーファに問いかけるものの、リーファははぐらかしてスピードを増していく。リーファとともに、キリトに数十秒遅れながらも雲海に突入すると、すぐさま乱気流が俺たちを襲う。
「気をつけてキリトくん! 障壁があるよ!」
リーファの必死の警告も、雲海の中を猛スピードで直進していくキリトには届かずに、キリトはスピードを緩めない。……いや、聞こえていてもスピードを緩めることはしないだろう。そのままキリトは雲海を力づくで突破し、世界樹の頂上へと飛翔して――行くより速く、キリトの周囲に電撃と虹色の障壁が走りその行く手を阻む。
「うっ……!」
「キリトくん!」
どうやらあの電撃と虹色の障壁がリーファの言う障壁らしく、不用意に接近したキリトはたまらず墜落していく。リーファも少し遅れて雲海を抜けると、墜落するキリトを助けるべく手を伸ばすが、キリトはその手をはねのける。
「……ッ!?
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