追憶-レミニセンス-part1/恋するルイズ
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がそう言い残して母の元から去って行った。彼女が部屋を後にすると、タバサの母は去っていく娘を見向きもせず、色のはっきりしていない目で腕の中の人形に頬ずりした。
「ああ、シャルロット…誰にもお前を殺させません。母がお前をこうして守ってあげますからね…」
タバサの本名は『シャルロット・エレーヌ・オルレアン』。ガリア王国の王族にして、現国王の弟の娘だという。しかも、かつてはとても活発で明るい性格だったという。あの子が明るい性格だったという事実に、キュルケは想像することもできなかった。最初に会った時から、タバサは口数が少なくて本を読んでばかりだった。
さらに驚くべき事実がキュルケの頭に刻まれていく。
5年前、父シャルルは、暗愚な兄ジョセフと異なり、人望と才能にあふれた身でありながら、先王の死の直後に起こった継承争いで、兄ジョセフらの一派によって毒矢を受けて死亡した。
魔法ではなく、下賤な毒矢で王子が倒れたことはシャルルを慕う家臣たちにとって無念極まりないことだった。ジョセフを王に即位させたジョセフ派の貴族は、今度はタバサと遺された彼女の母、オルレアン夫人を狙った。
ある日の晩餐会、タバサとオルレアン夫人は宮廷に呼びつけられると、ジョセフ派の刺客がタバサに水魔法の毒を盛られたグラスを手渡した。そうとは知らずに口に含もうとしたタバサだが、夫人が刺客の横顔が下卑た笑みと浮かべていたのを見て、彼女はタバサからグラスを取り上げ、自分がそれを飲んでしまった。結果、オルレアン夫人は死ぬことはなかったが、毒によって心を失ってしまった。それ以来、オルレアン夫人は自分が以前シャルロットに与えた人形『タバサ』を、娘だと思い込むようになってしまい、シャルロット本人を愛する娘だと気付けなくなってしまった。
毒を含んだグラスを差し出した犯人は捕まって処刑されたのだが、父が殺され母の心を奪われたタバサは、現在のようになってしまった。ペルスランたちから見て、まるで別人のように見えたという。
しかも、ジョセフが実権を握った王家はさらにタバサを追い詰めた。生還不可能と言われる超難易度の任務・または汚れ仕事をタバサに課すことで、遠回しに彼女を死なせようとしたのである。だがタバサは、愛する母のため、そして胸に抱いているであろう叔父ジョセフへの復讐のために弱音を吐くことなく、王政から課せられた任務をすべてこなした。領地を得てもいいほどの功績なのに、ガリア王国騎士団『北花壇騎士第七号』『シュヴァリエ』の称号を与えられただけで、厄介払いの如くトリステインへの留学を強制され、オルレアン夫人はこの屋敷に閉じ込められ、屋敷はもはや牢獄のようなそんざいとなった。それ以来、シャルロットはは『タバサ』と名乗り今に至っている。
「私はこれほどの悲劇を聞いたことがありません…今でも疑問ばかりが浮かび
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