追憶-レミニセンス-part1/恋するルイズ
[2/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
家の紋章だった。ゲルマニア人のキュルケもそのマークが貴族として相当の位であることは知っていた。しかし彼女がさらに驚いたのは、紋章の上にバツ印の傷…不名誉の象徴が刻み込まれていた。王族でありながら王位継承権を剥奪された者の証。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
タバサたちが来訪したのと同時に、彼女たちを屋敷の中から出迎えてきた老執事が一人だけ出迎えてきた。彼以外に迎えは来ておらず、キュルケは寂しい出迎えだなと思った。
老執事に案内され、二人は邸内に入る。中にはほとんど人はおらず静まり返っていた。
キュルケが客間のソファに座ると、タバサが「ここで待ってて」と告げると、客間から出て行った。
不思議に思うキュルケに、老執事がワインと菓子をテーブルの上に置いた。
「随分由緒正しいお屋敷の割に人がいないわね…」
「…失礼ですが、あなた様はシャルロットお嬢様の学友様で?」
老執事が恭しく礼をして尋ねてくると、キュルケは頷いた。
「ゲルマニアのフォン・ツェルプストーよ。それにしても…『タバサ』っていうのは前々から思っていたけど、やっぱり偽名だったのね」
『タバサ』という名前は、本来人に名づける名前じゃない。ハルケギニアでは平民でももっといい名前を付けるのが当たり前とされていた。
「タバサったら、偽名を名乗ってまでなぜトリステインに留学してきたのよ?あの子ったら、最初に会った時から何も教えてくれないのよ」
「そうですか、あのお方は『タバサ』と名乗られて…」
老執事は悲しげに目を伏せた。屋敷の門のバツ印を刻み付けられた紋章に今の彼の反応、そして由緒正しき屋敷でありながら屋敷内のあまりの人気のなさ。間違いなく何かがあったに違いない。キュルケは確信した。
「お嬢様がこれまでご友人をお連れしたことはありませんでした。お嬢様が心許された方なら、このペルスランめがお話しいたしましょう…」
深く一礼すると、キュルケが抱いたタバサへの疑問に、ペルスランと名乗った老執事は語り始めた。
タバサは、屋敷のある一室を訪れていた。部屋は薄暗く、向こう側の窓から太陽の光が差し込んでいるくらいだ。光に照らされているベッドに、一人の青い髪の女性がいた。タバサは彼女のもとに歩み寄り、跪いて頭を下げた。
「ただいま帰りました。母様」
「さ…下がりなさい!下郎!」
その女性こそが、タバサの母親だった。しかし、娘がはるばる帰ってきたというのに、タバサの母は彼女の姿を見た途端狂ったように悲鳴を上げて、ベッドの傍らに置いていた人形を腕の中に抱きしめた。
「恐ろしや…私たちが王座を狙おうなどと思い、刺客を未だに差し向けるなど…私たちはただ、静かに暮らしたいだけなのです!下がりなさい!」
スプーンをタバサに投げつけ、ただひたすら出て行けと喚く。
「…また来ます」
タバサ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ