第百八十六話 国崩しその十四
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「幾ら息子達といえども。三万の軍勢で十八万のそうした者達が率いる軍勢にはじゃ」
「到底ですか」
「勝てませぬか」
「どうしても勝てぬ」
これが元就の見立てだった。
「相手が悪過ぎるわ」
「ではこの戦は」
「負けて、ですか」
「毛利は滅ぶ」
「そうなりますか」
「そこはそうさせぬ」
滅ぼさせはしないというのだ、信長にしても。
「その為にはわしは全力を尽くす、安心せよ」
「殿がですか」
「そうされますか」
「そうじゃ、それこそ織田信長と刺し違えてもな」
そこには確かな覚悟を見せていた、そのうえでの言葉だった。
「毛利家は滅ぼさせぬ、家だけは残す」
「ではこの戦は」
「毛利家を残る戦ですか」
「そうした戦ですか」
「勝つか負けるかではなく」
「その通りじゃ、家を残る戦じゃ」
まさにというのだ。
「例え石高が百万石を切ろうとも構わぬ」
「家を残すこと」
「それが第一ですか」
「そしてわしの見たところ織田信長は毛利を滅ぼすつもりはない、備前の戦の後は」
隆元達は敗れるとだ、最初から見ての話だ。
「わし自ら出て織田信長の相手をしよう」
「では謀を」
家臣の一人が言って来た。
「それを使われますか」
「いつもの様にか」
「はい」
元就が謀を得手としていることからの問いだった、実際に元就は相手の家の有能な家臣を暗殺したり主に疑わせ殺させてきている。そうして多くの家を弱めそこから攻めて滅ぼしてきているのだ。それで問うたのだ。
「そうされますか」
「いや、それはな」
「されませぬか」
「それが通じる相手ではないわ」
織田信長は、というのだ。
「だからじゃ」
「策はですか」
「この度は使わぬ」
こう言うのだった。
「そのうえで戦う」
「そうですか、では」
「この度の戦は正面からですか」
「戦い、ですか」
「家を守りますか」
「そうする、ではよいな」
こう行ってだ、そしてだった。
元就はまずは吉田郡山城において隆元達の戦を見守った、だが彼はその戦がどうなるかわかっていた。そのうえで今は吉田郡山城にて次の戦の用意を進めていた。
第百八十六話 完
2014・6・18
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