第百八十六話 国崩しその十三
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「隙を見せればな」
「その時はわしが」
「わしがです」
二人も言うのだった。
「あ奴だけは放っておけませぬ」
「天下の梟雄です」
「まさに三悪人の一人」
「悪辣なことこの上ありませぬ」
「斎藤道三、松永弾正にな」
それにだった。
「そしてあ奴でな」
「戦国三悪人」
「まさにそれです」
「全くじゃ、悪党の中の悪党じゃ」
実に忌々しげに言う隆元だった。
「あ奴も気になるしな」
「この度の戦は」
「絶対に仕掛けましょう」
そうしなくてはならないというのだ。
「そして夜襲で」
「勝ちを」
「そうだ、まさに乾坤一擲だ」
その勝負になるというのだ。毛利家にとって、
「そして織田家を倒し」
「備前も因幡も守りましょう」
「毛利の領土を」
「宇喜多直家にも見せましょう」
「あの者を寝返らせぬ為にも」
「それではな」
こう話してだ、毛利家の三万の軍勢は織田家の大軍十八万のそれに夜襲を仕掛けることにした。これは彼等にとってまさに決死の策だった。
だがその策を吉田郡山城で聞いてだ、元就は袖の中で腕を組みそのうえで難しい顔でこう言ったのだった。
「確かに今はな」
「戦をすべきと」
「そう仰るのですな」
「あの者達の考えは正しい」
隆元達のそれはというのだ。
「それ自体はな。しかし」
「しかしなのですか」
「それは」
「うむ、戦をしても数が違う」
このことはどうしようもなかった、元就もよくわかっている。
「六倍もの数じゃ」
「ですから夜襲をですな」
「隆元様達は決められたのですな」
「どうせ負けるのならじゃ」
どうかとだ、元就が言うのはこのことだった。
「昼に正面から向かうべきじゃ」
「昼にですか」
「正面からですか」
「織田信長は傑物、家臣も揃っておる」
このことからも言う元就だった。
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