第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十一話 緋色の宵 前篇
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になっていた。
『そこに居たら死ぬ』といった漠然過ぎる感覚ではあるが、それでもその的中率は驚異的であり永琳ですら褒めたくらいだ。但し輝夜のその感覚を養った死の経験の原因全てが永琳本人である為、褒めるという行為は皮肉でしかない。
「ッ!?お父様ッ!お母様ッ!」
「ちょッ!待ちなさい!妹紅ッ!」
輝夜には未だに消えない死の警告を捉えており今すぐに此処から離れたかったが、妹紅が火の手が上がっている崩れた屋敷へと向け駆けだしてしまったので急いでその後を追った。
妹紅を追いかけながら周囲に視線を巡らせると塀の外からも赤い光と黒煙、人々の――――恐らくは悲鳴であろう声も聞こえてくる。
一体何が起こっているのか?と疑問を抱きながら妹紅に追いついた輝夜が見たのは――――倒壊した木材に下半身を挟まれている不比等だった。
「お父様ッ!お母様っ!待っていてください!すぐにこれを除けますからッ!」
妹紅はそう言うと不比等を押し倒している木材に手を掛け力を込めて持ち上げようとするが――――梁一本だとしても少女一人が持ち上げられる筈も無く、実際は屋根部分が殆ど倒壊しており男手数十人でも動かせる重量ではなかった。
加えて其処彼処から火の手が上がっており妹紅が持ち上げようとしている木材も煙を上げていた。それでも妹紅は一心不乱に力を籠め続けている。
不比等が挟まれている瓦礫の奥に紅緒の右手が見えているが――――全く動いていない。それをみて輝夜は紅緒がどうなったかを察し視線を不比等へと向けた。
不比等は苦痛に顔を歪ませながら、瓦礫を退かそうとしている妹紅に視線を向け……そして次に輝夜へと視線を移した。その瞳に何かを決断したかの様な決意と悲しみが宿しながら……。
「……妹紅、先に逃げなさい。私等の事なら大丈夫だ、紅緒も連れてすぐに後を追う」
「何を言ってるのよッ!置いていける訳ないじゃないッ!待っていすぐに助けるからッ!」
不比等は諭すように優しく妹紅に言ったのだが、妹紅は全く聞く耳を持たない。その間も火の手は回り続けておりこのままでは全員が焼死するだろう。
そして不比等は輝夜に視線を向けながら、
「輝夜君、妹紅を連れて今すぐ逃げなさいッ!」
そう叫ぶ不比等の有無を言わせぬ様な強い声音が躊躇していた輝夜を動かした。
「ッ!?来なさい妹紅ッ!!」
輝夜は妹紅の腕を掴むと強引に引きずるが妹紅は駄々を捏ねる様にそれに抵抗する。
「ふざけないでよッ!!お父様達を置いて行ける訳がないで「さっさと行かんかッ!馬鹿者がッ!!」
そんな動こうとしない妹紅に向けて突然不比等の怒号が響き渡る。妹紅はそれを聞いた瞬間に射竦められるかの様に硬直した。恐らく父親に怒鳴られた事など無かった
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