第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十一話 緋色の宵 前篇
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だけどね!」
輝夜の返答に妹紅はこめかみに青筋を浮かべながらそう叫んだ。
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藤原家で一晩を明かし、朝食の席に着いた輝夜は信じられない光景を目の当たりにした。
昨日の夜にあれだけ喧嘩していた二人が(喧嘩というよりは紅緒による一方的な私刑であったが)新婚さながらの空気を醸し出し朝食の席に桃色の空間を創り出していたのだ。
それだけではなく、あれだけ滅多打ちにされていた不比等の顔には痣一つ無い事も驚愕だった。妹紅曰く『喧嘩の翌朝にはこんな感じ』との事。傷の治りが早いのは不比等本人が言うに『愛の力』だそうな。
愛の力で治癒するなら喧嘩なんかするな、と輝夜は思いつつ面倒だったので何も言わず朝食を済ませた。その後は不比等は仕事に出掛け、妹紅もそれに随伴していった。
出かける時に妹紅が昨日、輝夜からもらった瓶に紐を付け首飾りの様にしているのを見つけた輝夜が『縁起が悪い』と言って止めさせようとしたのだが、結局は貰った物をどうしようが妹紅の自由と言う事になった。
輝夜にとっては不幸の象徴とも言える品が妹紅にとって御洒落の一つになったのは何とも複雑な気持ちだったのは言うまでもない。
そして妹紅達が出かけた後は縁側に腰掛け空を眺め続けていたのだ。その時彼女が何を想っていたのかは本人の心の内である。
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「はぁ〜……まぁいいわ、ほらとっとと行くわよ」
輝夜の態度に呆れながらも妹紅はそう促し屋敷の居間を目指す為に踵を返した。輝夜もそれに追随する為に歩を進めようとした時――――慣れ親しんだ、否身体に刻み込まれた“ある感覚”が彼女を襲う。
瞬間、輝夜は自分に背を向けている妹紅の手を掴み強引に引き寄せ――――その勢いのまま縁側から庭へと身を躍らせた。
突然の事で混乱している妹紅と輝夜の視線が交わったその時――――耳を劈く様な轟音が響き凄まじい衝撃が迸る。
未だ空中に身を躍らせていた二人はその衝撃に叩かれ数m先に造られていた池まで吹き飛ばされ、水飛沫を上げながら池へと落ちた。
二人はすぐに水面から顔を出し咳き込みながら、何が起こったのか確認する為に屋敷の方へと視線を向け――――崩れ落ち燃え盛る屋敷“だった建物”を見て愕然とする。
輝夜が感じたモノ、それは――――“死ぬ”という直感……否、最早予知の領域である。
本来ならあり得ない程の“死”を経験してきた――――そう十や百などでは無くその回数は万を遥かに超えていた。
その経験が彼女に一つの能力となって表れているのだ。実際は能力と呼べるほどのものではないが、自分に迫る“死”を絶対的な確率で捉える事出来る様
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