捨てきれぬ情
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「はい、適性がないと思われたみたいで、投与する薬物がもったいないみたいなことを言ってましたね」
「だが、実際には大当たりだったわけだ」
記憶を思い出すかのように語る少年に、卜部は皮肉気に笑う。
(90人も犠牲を出しておいて、当たり外れも分からんとは、こりゃあ実用化の可能性は低いな。その命の結晶ともいうべき『ペルソナ制御薬』も常用すれば、命にかかわるほどの劇薬だ。ペルソナを無理矢理目覚めさせられた『人工ペルソナ使い』にとって、コントロール出来ないペルソナを制御するために必須の物だというのにな。量産されたら脅威だとも思ったが、効率が悪すぎて論外だな。いかに桐条といえど、無限に人をよういできるはずもなし。報告書の修正は必要ないか)
一方で冷徹に計算する卜部だったが、それは実際にはミスリードや見過ごした点を多々含んでいる。透夜に適性が全くないのは事実であったし、研究所にとって『人工ペルソナ使い』は前段階に過ぎず、その最終目的は『対シャドウ兵器』(その中に人工的にペルソナを使用できる兵器『アイギス』も含まれる)の製造であることなど。とはいえ、卜部の結論が全くの外れというわけでもない。確かに実用性は乏しく、効率もわるいことは否定できない事実であった。
「よし、ご苦労さん。上に戻るぞ」
「はい」
先を行く卜部の背中を見上げながら、心中で深々と安堵の息を吐く。
(どうにかうまくいった。『トウヤ』も見せずにすんだし、ベルベットルーム様々だな。『ホテイ』が使用中にランク2になったおかげで『マハ・ラギ』を使えたからな、あれでどうやら、暴走状態なら不可能ではないというふうに思ってもらえたみたいだな……。
なんとなくだが、相手が信用できるかどうか確信できるまでは、『トウヤ』は見せない方がいい気がするからな。この人はあの『ウラベ』かも確認できてないし、仮にそうだったとしても、ファントムソサエティにいた人だからな。抜けた後ならともかく、抜ける前なら組織に引き渡されてもおかしくない。一応の恩人とはいえ、あちらにも思惑あってのことだし、ある程度の警戒は必要だ。それに……)
卜部はは背中を向けているが、警戒は解いてないのがはっきり分かるし、透真の背後にリャナンシーが配されているのも、いざと言うときは挟撃して、封殺するつもりなのだろう。信用していないのはお互い様であった。
(しかし、これからどうなるんだか……。透夜の糞叔父が透夜の戸籍をそのままにしているとは思えないし、仮に放置されていたとしても、桐条が何らかの措置をしている可能性が高い。つまり、戸籍もなけりゃ財産もない今の俺は、死人同然というわけだ。まあ、元々死んだはずの人間だったんだから、お似合いと言えばお似合いか……)
透真は心中で自身のおかれた
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