捨てきれぬ情
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「たいしたもんだ…」
八神透夜と名乗った元実験体の少年の作り出した惨状に、卜部は驚嘆した。
互いの自己紹介をおえ、一服した後に場所を地下の修練室に移して行われた八神透夜の異能の確認。
少年はどこからかカードを取り出し、それを握りつぶす。同時に蒼い光と共に顕現する『ペルソナ』という異能。卜部が用意した的を火球を放って次々ともやし、最後には複数の的を同時に燃やし尽くして見せたのだ。
「『ペルソナ』、聞いてはいたが、大した異能だ。成人すると遅かれ早かれ使えなくなっちまう不完全な異能だっていう話だが、十分すぎる力を持ってやがる……。こりゃあ、少し考え直さんといかんか?」
卜部は『ペルソナ』という異能を知ってはいたが、ペルソナ使いと会うのは初めてである。成人以降は使えなくなる異能など彼らの業界では、あまり評価されないものであるため、彼自身そんなにたいしたものではないと思っていたが、見ると聞くとでは大違いである。
熟練のデビルサマナーである卜部であっても、魔法は使えない。魔法を使えるのは、異能者という限られた者だけである。それを『ペルソナ』を介してとはいえ、間接的に使うことできるのだ。年齢制限があることを差し引いても、強力な異能と言えよう。
ましてや、それをなしたのは前世の記憶があるとはいえ、5歳児なのだ。驚くなと言う方が無理があろう。しかも、アナライズしてみたところ、少年の力量はLV5。常人の限界がLV10であることを考えれば、覚醒して間もないというのに、明らかに常軌を逸した力の持ち主であった。
「これが暴走したというなら、あの現象も分からないではないか……」
「理解してもらえましたか?」
「ああ、あの時の現象は、初顕現で制御できなかったゆえの力の暴走というわけか?」
「恐らく、そうだと思います。気づいたら、シャドウは燃え尽きてました。どうにか、必死で脱出したら、研究員は皆倒れ伏してましたから」
「しかし、『ペルソナ』がこれ程のものなら、連中だって対策くらいしてたんじゃないか?あそこでは『人工ペルソナ使い』を作りだすことが目的だったんだろ?」
「はい。ですが、知っておられますか?あの施設に集められた100名の孤児の内、すでに90名が死んでいることを。その殆どが適性がないものだったらしいです。運良くペルソナを発現できた者もいたようですが、薬物投与されていたせいかいずれも制御できず、暴走した挙句、自らのペルソナに殺されるということが起きています」
「なんだと?9割方死んでたのかよ!なんつう効率の悪さだ。お前らみたいな年代の餓鬼共に薬物投与までしてやがるとは、正気の沙汰じゃないな。胸糞が悪くなるぜ……。
うん、待てよ?ということは、お前は薬物投与を受けてないのか?」
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