第一章
str3『第一層の地でA』
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
迷宮区の壁に、ソードスキルのエフェクトライトが反射して、淡くきらめく。
「せやぁぁぁっ!」
金髪の少女の手に握られ、剛と音を立てて振り払われた両手剣。ソードスキル《サイクロン》の一撃が、《ルインコボルド・トルーパー》二体を薙ぎ払った。激しいノックバックが発生し、二体の遺跡の犬面人は動きを止める。
「スイッチ!」
攻撃者であった金髪の少女――――シャルの鋭い叫びに応答して、クロスも両手剣を抜きはらう。ダッシュでルインコボルドに近づくと、大上段からの斬りおろし→切り上げの二連撃、《ブレイク・アーク》を放つ。
斬撃に吹き飛ばされ、コボルド達は今だ動くことができない。だが、こちらは違う。パーティーメンバーであるシャルは技御硬直から立ち直り、すでに次の剣技の準備に入っていた。
これが、パーティー戦で最大の肝となる戦術、《スイッチ》だ。一人が技を大きめの隙を作ることで、その隙に他のプレイヤーが入って、戦闘を引き継ぐ。その間に一人目は体制を整えたり、HPを回復したり、技御硬直やスキル冷却時間が終了するのを待つのだ。
βテスト出身ではなかったらしいシャルだが、MMOゲームの基礎は比較的知っていたらしく、スイッチの扱いもうまかった。むしろクロスの方がパーティー戦に不慣れで、足を引っ張っているのかと時々思うくらいだ。
クロスと入れ替わりで前に出たシャルが、《スマッシュ・アーク》を発動。両手剣の重量を生かした重めの打撃攻撃が、二体のコボルドを直撃。そのHPバーを消滅させることに成功した。
両手剣ソードスキルの基礎技、横薙打撃の《スマッシュ》、縦方向打撃の《クラッシュ》、縦方向斬撃の《ブレイク》、そして横方向斬撃の《グレイヴ》。片手剣のように小回りの利くソードスキルは少ないが、どれも威力が高い。その上位剣技ともなれば、二連撃であるがゆえに威力だけでなく速度も上乗せされるため、より強力になっているのは必至のことであった。
もうお分かりだろうが、シャルのメイン武器スキルは、クロスと同じ《両手剣》。聞いたところによればスキル熟練度も同じ様なものだそうで、お互いに相手の技の軌道や内容が解るため、パーティー組んで連携をするという面では非常にやり易かった。
勿論、問題点もある。
今現在クロスとシャルがいるのは、アインクラッド第一層迷宮区十九階だ。現時点では敵もまだそこまで強くなく、種類も少ない。
だが今後、もっと上の階層へと登っていき、敵が強くなって、それやその技の種類が増えれば――――その時、全く同じ武器を使う二人きりのパーティーでは、対応し切れないかもしれない。
と、そこまで考えて。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ