第八章
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また彼に対して言った。
「暴走だと思うがな」
「じゃあ今はまだあれか」
「彼女の傍に行ってそこで興味がある本を買うんだな」
「またそれか」
「ああ、昨日と同じでいいだろ」
加藤へのアドバイスはこれであった。
「それでな。まだ慎重に行け」
「そうだな。じゃあそうするか」
「うどんとかそばはすぐに食わないと駄目だがこうしたことはじっくりだ」
「じっくりか」
「何度も言うがな。慎重にだ」
本当にこのことを強調するのだった。
「わかったな。まだそれには早い」
「一歩ずつでいいか」
「そうだ。だから今はじっくりとだ」
「よし。じゃあ今日は」
「太宰じゃないかも知れないぞ」
そっと忠告してきた。
「御前の嫌いな作家でも我慢しろよ」
「じゃああれか。芳本隆明とかでもか」
「吉本読む女子高生はあまり聞かないな」
紅は今の加藤の言葉には首を捻って返した。
「ちょっとな」
「そうか」
「もう吉本は駄目だろ」
そして駄目出しまでした。
「あいつは」
「駄目か?」
「そもそも女の子で哲学書っていうのもあまり聞かないぞ」
彼は言った。
「それ自体がな」
「まあそれはそうだな」
加藤も言われてみればそうだと思った。この辺りは確かに個人的な好みが関係するが女の子で哲学書を読むというのは確かになかった。
「あまりないよな」
「それにあいつ自体も全然駄目だ」
「吉本隆明がか?」
これは加藤にとっては意外な言葉だった。
「あいつ確か戦後最大の思想家って言われてなかったか?」
「それは知ってるんだな」
「どっかで読んだ」
そのうえでの知識であるのだ。
「どっかでな。それで覚えてるけれどな」
「何書いてるかわからない時は教祖になれて誰でもわかる文章を書けるようになったら只の思想家になる」
「そういうものか?」
「まともな奴が麻原なんか偉大な思想家とか言うか」
紅は今度は嫌悪感を露わにさせていた。彼はそれと共にうどんを食べている。
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