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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
10話 剣のネクシャリズム
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「無拍子……?」
感嘆の意を漏らす千堂専務、彼に対し忠亮は自分が戦術機操縦で行ってきた工夫のネタばらしを行う。
「ああ、元々は年老いた剣客が斬撃の威力を底上げしつつ“無為の構え”から放てる斬撃を模索した結果生まれた手法だ。
歳を負うにつれ、筋力はどうしても低下し体が動かなくなってくるからな。その為、自重を加速に用いて斬撃を重くしたのさ……第二世代機以降の戦術機と基本的には同理念だと思えばいい。」
「成るほど……武術とは奥深い技術ですな。」
感慨深けな息をつく千堂専務。第二世代機以降の戦術機はすべて重心を高めに設定し、その倒れ易さを強化し、その倒れる際の運動エネルギーを用いての高機動性を獲得している。
それを、四肢の運動による慣性モーメントの変化と空力制御を合わせ三次元的に変化させたのだと理解した。
「稼働時間と操作性はもっと簡単だ、出力特性の変動幅が急ならその制御の量子化とサンプリング密度を上げつつ、人間工学に基づいたOSを組めばいい。根本原因の解決に凝り過ぎて、苦肉の策だからと放置しすぎたな。」
「いや、耳が痛いですな。ハードに凝り過ぎている……我々日本企業の悪い癖です。」
しみじみと眼鏡を直しながら語る千堂専務。まさか、一介の衛士にそれを指摘されるとは思いも拠らなかったのだろう。
「少々誤解があるようだから言っておく、剣客とは身体能力で戦うモノではない。剣術という技術で戦うモノだ―――身体能力だけに頼った敵は然程に手ごわく無いからな。」
「む……?」
千堂専務が怪訝な顔つきとなる、理解が及ばなかったらしい。
それに顎を左腕で抑え、やや思案してから説明し直す。
「分かり憎かったか……簡単に言えば、俺たち剣術家は型と呼ばれる戦術機でいうところのモーションパターンを肉体に反射レベルで刷り込ませると同時に、肉体を制御する精度を上げるために反復練習を欠かさないんだ。
決して身体能力の底上げのために剣を振っている訳ではない―――言ってみれば、常に戦術機のOSを改修するための手法がプログラミングか、反復練習かの違いでしかない。という事だ。」
「成るほど……つまり、機体性能ではなくその制御こそが重要……斑鳩卿は衛士ではなく剣術家で在ったからこそ、このような発想が可能だったという事ですか。―――それは今回の兵装とも関係ありますね?」
得心の頷きに続く確信の意を持った言葉……それは正しかった。
「中々慧眼だな。そうだ戦術機は甲冑でもあり剣でもあるが、その運用思想は騎馬に通じるだろう特に軽量化・高速反応・高機動を強化してきた第三世代機では殊更その傾向が顕著だ。
そして、74式長刀はスーパーカーボンの強靭性に依存した、材料工学的には芯鉄のない古刀に近い構造となっている。」
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