三話「朋也」
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「そうだけど……だけどよ!?」
「河南子、悪いがもう帰ってくれ?気分が悪いんだ……」
そういって俺は彼女に背を向けて畳の上に寝そべった。
「ああそうかよ……この冷徹野郎!」
そう河南子はバタン!と、ドアを閉めてアパートから飛び出していった。
彼女が飛び出してから数分後、智代が帰ってきて河南子のことを俺に聞く。
「ただいま……さっき、河南子が泣きながら走り去って行ったが、何かあったのか?」
「さぁな……」
俺は何もなかったかのように、そう答えて手元にあった新聞を広げた。
「いつも、家事をしてくれて助かる」
スーツの上着を脱ぎながら綺麗に現れた流しや居間を見て彼女は礼を言う。
「居候させてもらってんだ。これぐらいはさせてくれ?」
「そうか、ありがとう」
上着を脱いでちゃぶ台で一息つく智代は、横たわる俺に明日の件で尋ねる。
「今朝も言ったが、明日付き添ってもらいたい場所がある。お前にも合わせたい人物がるんだ」
「ああ、別に構わねぇよ?」
「じゃあ、今日は明日に備えて早めに寝ておくか?」
「そうだな……」
智代が風呂に入っている間、俺は二枚の布団を敷く。おそらく俺が使っている布団は前に朋也がつかっていたのだろう?こうして堂々と彼の布団を使っていると、まるで俺が智代を奪ったかのように思えて心が痛い。
「先に寝ないで待っていてくれたのか?」
パジャマに着替えてきた智代は窓辺から夜空を見る俺に歩み寄る。
「なんとなく、夜風に当たりたくてな……」
智代がきたことで、俺は窓を閉めて二人は布団へ入った。明日に備えて早く眠りにつこうと思うが、俺は河南子から聞いた朋也のことと、彼女が俺に訴えたあの言葉が気にかかり、どうしても眠ることができずにいた……
*
翌朝、俺と智代は朝食を終えた後、彼女にある場所へ連れてこられた。そこはとある墓地だった。
そんな墓地の中で智代はある墓石の前に立つ。墓石には「岡崎朋也」と刻まれていた。
「会わせたい人って……」
「ああ、朋也という私の恋人だ。三年前に、病でこの世から去った……」
「彼については、河南子から聞いたよ?」
「河南子から?」
「ああ……」
「……」
しばらく、智代は口を閉ざしたのちに、再び口を開いた。
「……シン、実はな?私がどうしてお前を家においているかというのは、お前が朋也に似ているからだ。瓜二つ、いや……生き写しといってもいいぐらいに、お前と朋也はそっくりなんだ」
「……すまないが、俺はあんたのいう朋也にはなれない」
「わかっている。けど、これからもずっと一緒に暮らすことはできるはずだ?」
「朋也を、裏切ることになるぞ?」
「そうだ……覚悟している。だから、今日は彼にそれを告げるべくお前と共にここへ訪れたの
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