三話「朋也」
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*
暗い路上を一台の車が走っていた。フロントガラスや周囲の窓はグシャグシャだが、走るスピードは変わることはなかった。
「シンのやつ、今頃初号機の餌食になっているころだろう……」
そうほほ笑むドライバーの鬼守だが、その予想は大きく裏切られる。
それは、突如前方に一人の影が現れたのだ。しかし初号機の姿ではなく、緑のごつごつした生物的ボディーに頭部からはバッタ状の触手が風に揺れていた。
「な、なにっ!?」
急ブレーキで止まると、鬼守は車から降りて再び智代を人質に取ろうとしたが、そんな彼の間合いにはシンが居た。
「ぐぅ……!」
「失せろ……今なら見逃してやる」
俺は、智代だけ返してくれればそれでいい。自分の正体をこの男から聞き出そうとすることまでの考えは今の俺にはなかった。
「お、覚えていろ……!」
弱虫をかみしめ、鬼守は夜道へと走り去って行った。
「シン……?」
一方、麻酔から覚めた智代は、まだよろけるものの車から出てくる。そこには、バイオソルジャーとなったシンが居た。
「し、シン……!」
彼女はシンの元へ駆け寄り、その不気味は、しかし、ぬくもりの感じる血まみれの懐へ飛び込んだ。
「智代……」
シンも、そんな智代の震えだす体を沈めるかのようにそっと大きな緑の腕で抱きしめてやる。
*
「シン……お前は、朋也なのだな?」
「俺が……?」
夜更けの公園で人間に戻った俺は、自分の正体を知った。それは、恐ろしいほど偶然であるも岡崎朋也なのだ。
「……シン、奴らにばれた以上この町にはいられない。ここを出よう?」
智代はそう言うも、俺は彼女と共に逃げいいものだろうか?
「しかし……」
「いずれ、離れて逃げても同じことだ。それに、お前が朋也だとわかった以上、記憶を取り戻してやらないとな?」
「智代……」
「……お帰り、朋也」
彼女は、俺の肩へ耳を添えた。
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