第二十九話 旅のはじまりその十五
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その消え去るまでを見てだ、薊は仲間達に言った。
「今だに全然わかってねえんだよな、怪人のことは」
「そうね」
菖蒲が薊に応える。
「何もかもがね」
「何処の誰がどうして造り出してるかな」
「そして私達に襲い掛かる理由が」
「全然わかってねえな」
「先輩が灰を調べてくれたけれど」
それでもだった、菖蒲はこのことも言うのだった。
「それでも」
「ああ、今のところわかってるのはな」
「怪人が人間ではないことと」
「他の生きものとの合成ってことだな」
「人工で造られたことはね」
「それは間違いないにしてもな」
それでもなのだった。
「他のことはな」
「全くわかっていないわね」
「本当に何者なんだろうな」
薊は真剣な面持ちで怪人が消え去ったその場所を見据えながら自分の後ろにいる菖蒲に対して言うのだった。
「こいつ等は」
「本当に一切わかっていないから」
向日葵もだ、今は苦い顔だった。普段の天真爛漫さがない。
「困るわよね」
「ああ、これまで結構闘ってるけれどな」
「先輩が調べてくれたことはわかっても」
「本当に何処のどいつが造っていてどうしてあたし達を狙って来るのか」
「そのことがね」
「全然わからないな」
こう言うばかりだった、そして。
薊は身体を仲間達の方に戻してだ、今度はこう言った。
「まあ今はさ、あれこれ考えても答え出ないよな」
「それならっていうのね」
「ああ、お喋りに戻ろうぜ」
いつもの明るい笑顔でだ、菊の言葉にも答えてだった。
自分の席に戻ってだ、こう言うのだった。
「和歌山までまだだよな」
「はい、白浜までは」
桜が答える、一行の第一の目的地に着くにはとだ。
「まだ時間があります」
「じゃあお喋り再開するか」
「そうね、窓から景色を見てもいいし」
「旅を楽しみましょう」
菊と桜は列車の旅の醍醐味を言った。
「これからね」
「白浜に着くまでは」
「白浜で遊んで」
そして、と言う菫だった。
「それからはね」
「三重か」
「まずは白浜で楽しんで」
そして、というのだ。
「旅を満喫しましょう」
「泳いで美味いもの食うか」
こうも言う薊だった。
「これから」
「暑いから海が気持ちいいわよ」
裕香が薊に笑顔でこのことを話した。
「だから楽しめるわよ」
「だよな、今から楽しみだぜ」
闘いを終えた薊も笑顔で応える、そうして楽しく話しながら鉄道の旅を楽しみそのうえで白浜に向かうのだった。
第二十九話 完
2014・8・24
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