第二十九話 旅のはじまりその十四
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「舌を使ったんだな」
「そうよ、そしてその舌もね」
それもだというのだ。
「消していたのよ」
「だよな、だからだよな」
「あんたに攻撃は見せなかったのよ」
そうだったというのだ。
「けれどそれでもなのね」
「見えないのなら最初から見なかったらいいんだよ」
「それがかえってというのね」
「惑わされるからな」
このことがわかったからだというのだ。
「だから見ない様にして」
「他の感覚を使って」
「耳に気配にな」
そうした感覚に頼ったというのだ。
「それであんたの攻撃からな」
「私の居場所を感じ取って」
「一気にやったんだよ」
その棒を投げたというのだ。
「上手いったな」
「頭がいいわね」
「まあ機転は利かせたさ」
実際にというのだ。
「あたしもさ」
「それで勝ったのね」
「そうさ、じゃあこれでだよな」
「消えるわ」
怪人は自分から言った。
「これでお別れよ」
「そうなるな、じゃあな」
「さよならと言っておくわ」
怪人は着地した、そしてだった。
薊にこの言葉を告げた、そうして。
その身体が灰になる中でだ、こうしたことも言った。
「面白い勝負だったわ」
「それは何よりだな」
「生まれてすぐにここに来たけれど満足してるわ」
「そういえばな」
薊は怪人も生まれてすぐに、という言葉を受けて彼に問うた。
「ふと思ったことだけれどな」
「何かしら」
「あんた達は誰が何処で生み出してるんだ?」
「あら、そんなことを聞くの」
「ああ、どう考えても普通に生まれた存在じゃないからな」
それで聞くのだった。
「一体何者なんだよ」
「それはあたしも知らないわ」
全く、という色の言葉だった。
「気付いたらここにいるのだから」
「そうか、送り込まれてるんだな」
「そのことも知らないしわからないわ」
「つまり何の記憶もないんだな」
「あんた達には悪いけれどね」
「そうか、ならいいさ」
薊は怪人の言葉から自分が知りたい情報は得られないと見てこう返した。
「それならさ」
「そう言うのね」
「ああ、いいさ」
それならと言うのだった。
「じゃあこれからな」
「去らせてもらうわね」
最後にこう言ってだ、怪人はその身体を完全に灰にさせて消えた。その灰は自然と消え去って何処にもなくなっていた。
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