第1章 群像のフーガ 2022/11
2話 情報屋
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ヨリの耳に入らない程度の声で商人に商談成立を告げ、持物に《掘り出し物》を押し込んだ。
「へー、これはまた乙なお買い物だナー」
「な………ッ!?」
背後からいきなり声を掛けられ、突如として心臓が浮くような感覚に襲われる。
別にヒヨリやその他であれば驚くことも………ないというと嘘になるかも知れないが、俺の予想する人物に限ってはそうもいってはいられない。
語尾に特徴的な鼻声が被さる甲高い声こそ似ているが、まだ本人であるという確証はない。というより、そんなタイムリーに現れる方が気味悪い。そういうふざけた偶然はフィクションだけにしてもらいたいものである。
とはいえ、念のためまだ幾許か残されているであろう運に頼って背後を振り向く。
「二ヒヒ、現行で美味しいネタをありがとナ。リンちゃん」
………どうやら、運は先の掘り出し物で枯渇してしまったらしい。
振り向いた先にいたのは、小柄な身体に布と革の装備を纏い、武器は右腰のクローと左腰の投げ針という、あからさまな敏捷特化のプレイヤー。ローブから覗く三本髭のメイクをあしらった頬に口角がニッと吊り上がる。今まさに会いたくなかった顔がそこにあったのだ。
「あ、アルゴさんだ! こんにちは!」
「うん、ヒヨリちゃんは今日も良い子だネ」
だいたい同じくらいの身長の奴に頭を撫でられているヒヨリを見つつ、この局面をどう切り抜けようか黙考する。だが、こちらが如何に切り返しても彼女は容易く受け流し、さらに弱みを見つけ出すことさえしてしまう。厄介な相手である。
――――《鼠》のアルゴ。
彼女もまた、このデスゲームに情報という武器を以て挑むプレイヤーである。
情報を用いるという特性上ある意味では俺の同類ともとれるが、情報を独占する俺とは違い、彼女は情報を商品として扱う《情報屋》として立ち回っているのだ。
「何度来ても同じだ。売れる情報なんて持ってない」
「厨二剣士誕生ってだけでも一面トップは飾れるけどナー。でも、意味ありげに街を嗅ぎまわってるダロ? 昨日の晩だって街から出ていってたじゃないカ」
………見られていたのか。
《索敵》スキルでプレイヤーを補足できるようになるのはもう暫く先の話だ。今後このような事が起こるのを防止するためにも、《片手剣》の熟練度稼ぎは一時放置しようかと真剣に迷ってしまう。
「でも、隠しクエとかじゃないとするト………あ、そうだったナ。《圏内》だとやりづらいだろうからナ」
何かを察したような、それでいて、こいつにされると不安になる「面白いものを見つけた」という好奇心が含まれた、にんまりとした表情。
隠しクエを探していたことにさ
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