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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章 群像のフーガ  2022/11
2話 情報屋
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りのコストパフォーマンスといえよう。
 ………まあ、たまにはこういう買い物も悪くはないか。品物が更新されてしまう前にと半ば即決で深紅のフーデッドケープを購入する。幸い、二度にわたる中ボスコボルドの討伐で所持金は今までにない潤いを見せている。この程度は散財の部類に入らないくらいだ。


「ほらよ」
「わあ、ありがとう!すごい可愛いよー!」


 迷うことなく即時装備してはしゃぐヒヨリを放置して、もう一度だけ露店を確認する。既に品物は新しいものに更新されてしまっていたが、その中で二つ、目に留まる存在があった。

――――シルバーで彩られた黒革で拵えた指貫のグローブと、ベルトや細い鎖や紐や粗い布で幾重にも巻かれた鞘である。

 いかにも気取ったデザインであるそれらは、しかし優秀だった。
 グローブは防御力が一般的な店売りより僅かに下回るものの筋力(STR)ステータスにボーナスが付き、特に鞘に至ってはどういう事なのか納めた剣の《鋭さ(Sharpness)》を上昇させる効果があるらしく、どうしても欲しい性能だった。

――――だが、同時に躊躇いも生じた。

 想像してしまったのだ。――――端の擦り切れたコートにキラキラした黒革の指貫グローブ、そんな姿でグルグル巻きの鞘から得意げに剣を抜く自分の姿を………
 どうするべきか。今は早朝ということもあってプレイヤーの姿は極めて疎らで、おまけにこの露店に釘付けになっているのは幸か不幸か俺だけなのだ。これは神か悪魔が「お前に力をやる」と言っているようにも思える。


「燐ちゃーん、早く戻ろー!」


 そして否応なく急かしてくるヒヨリの声。相棒を恨めしいと思ったのはスイッチの練習以来である。結構離れたところにいたから、この逸品達は目に触れていないだろう。それは救いだと思っておこう。
しかし、この決断を下すためのも熟考する猶予が、覚悟する意志力の充填が、どうしても必要なのだ。急かされたからと言ってどうにかなるものでは断じてない。


「燐ちゃん? ………あ、わかった! 何か面白いものがあったんでしょ! 見せて見せてー!!」


 楽しそうな声を挙げながら全力疾走でこちらに向かってきた。この時ほど相棒を憎悪した時はない。
 だが、同時にこの追い込まれた事態が俺の意思の着火剤となったのだ。やらないで後悔するより、やって盛大に後悔しよう。ステータスの上昇は自身の命を守る力を高めることにも繋がり、ひいてはヒヨリの助けにもなるのだから。


「店主、このグローブと鞘を貰い受けるぞ」
「合わせて二十四コルだね」


 ………店主よ、欲がないのか目が節穴なのかは知らないが、もう少し適正価格で物を扱うべきだ。
 心の中でこのNPCの商才のなさに頭を抱えながら、ヒ
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