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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章 群像のフーガ  2022/11
2話 情報屋
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借りを清算できるような価値のある答えにはならないだろう。


「一緒に居るのは今でも怖い。正直、いつも押し潰されそうだ」
「でも、リンは守れてるじゃないか。……俺なんかより、ずっと……」


 キリトの表情に、より濃く心痛が浮かび出る。だが、ここでキリトの認識に間違いがあるようなので訂正を入れておく。


「俺は守ってない」
「守って、ない……?」
「ソードスキルの使い方から戦闘の流れや小技まで努力して身につけて、四週間もしないうちにあそこまで成長したのはヒヨリ自身の努力だ。戦闘で多少の庇う守るはあるかもしれないけど、そうじゃない。あいつは背中を預けられる自慢の相棒だ。………一緒に、戦っているんだよ」


 それでも守っていることには変わりないが、少しくらい脚色があっても罰は当たるまい。
 事実、守りっぱなしだった頃は普通に戦うよりも骨が折れたが、今はむしろ助かる事の方が多いように思える。ヒヨリはどこか抜けているように見えて、コツを掴む才能があるのかも知れない。


「………相棒、か」
「キリトの周りにもそんな感じの奴がいるんじゃないのか? 意外に気付いてないだけかもな」


 これで話は終わり。的を射ているのかと言ったら恐らく場外なんだろうけど、俺にはそれしか思い浮かばなかった。


「じゃ、今度こそ失礼するぞ。………そういやそいつ、何日も未マッピングエリアにいたならマップデータもさぞかし充実してるんじゃないか?もしかしたら攻略目指してるプレイヤーだったりしてな」


 ふと、キリトが拾った寝袋女について思ったことを言い残し、早々に空き地を後にする。地形を粗方把握している俺やキリトには無用の長物でしかないが、トールバーナに集まっている新規プレイヤーは喉から手が出るほど欲しがること請け合いだろう。
 何はともあれ、後の事は保護責任者であるキリトに任せるとして、俺も早々に空き地を後にする。俺も守りはしなくても世話≠しないといけない奴がいるわけで、それで手一杯なのもある。


「待たせた。戻るか」
「うん」


 既に黒パンを食べ終えて、自主的にソードスキルの練習を開始していたヒヨリに声を掛ける。《細剣》スキルの熟練度が上がり、新たに習得したそれを重点的に繰り返す姿が妙に頼もしい。
 少し前まではすぐに疲れたと駄々をこねていた奴が、これほど成長するとは誰が予想できようか。


「燐ちゃん、疲れたからおんぶして!」


 ………現実とは、非常である。


「徹夜で疲れているのは分かる。俺もね、同じなんだよ。疲れてるの」
「私は練習してたもん! 疲れたもん!」
「いいから帰るぞ。そこらへんの腐葉土で朝飯済ます気か?」
「そ、それだけは嫌だ!?」


 ―――
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