首無き麒麟は黒と出会い
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しい、とその男は感じていた。
彼が与えた狂信はそういうモノ。自分が強くなってしまったから、何処かで戦が起こっているなら向かいたい。“自分達が戦って一人でも多く救いたい”そういう渇望を生み出してしまう。
心の底まで、彼らは黒に染まっている。
特に今集まっているモノ達はその心の澱みが根深い。
何故なら、彼と一番精強な部隊二つが失われた時も、彼らは言いつけを守って策の為に耐えていたのだから。
「ああ、そうだな。俺も戦いてぇよ。ホントならじっとしてるなんざ出来やしねぇ」
「はっ、つくづく俺らはあの方と一緒になっちまったんだって思うぜ。洛陽で無茶を押し通したあの方も、こんな気持ちだったに違いねぇな」
しかし白馬義従のように駆ける事はしない。
感情に突き動かされて動くも正しいが、彼らにとって上の命令は絶対であるが故に。
そうして、またため息を落とした。
「渇いてんだなぁ……俺達」
「おおとも、おおとも。俺らは渇いた。渇いちまった。なんだ……それなら、誰かがまとめなきゃなんねぇよな」
周りを見れば、何処となく落ち着きがなくなって来ていた。
当たり前だ。彼らも同じく、五百の全てが渇望している。帝を守る誉れより、この手この命を賭けて救わせろ、と。
これは澱みだ。彼が居れば抑えられる。彼からの命令であれば心の底から従える。それほど、失った心の支柱は大きすぎる。
心が渇く。たった一つでいい。内から溢れ出る渇望を抑えられるだけの指標が必要だった。
第三の部隊長は数歩前に出て、くるりと振り返った。
これは誰かがやらなくてはならない事。自分達だからこそ、欠けたままで雛里に従えた。今の彼らには片腕も頭もないが、隊の在り方から乱れなかった。
両手両足になれるのは四人。その中で一番信頼が厚く、一番古く、一番彼の事を知り、皆と仲がいいのは第三の部隊長。平穏の大切さを一番に知っている彼はまだ若く、新しい家族も出来た。故に、皆から生きてくれと願われて彼とほぼ同じ立ち位置。
代表として立っても、文句など出ようはずがない。
次第に消え行く歓談の声。じ……と彼らは部隊長を見据えた。
「なぁ、お前ら……心の渇きは万全か?」
不敵な笑み、さながら、黒麒麟のように。
応、と声が重なった。一糸乱れぬ返答は通常通り。彼の身体として相応しい。
「忘れてねぇよな、俺達の内っかわにある想いのカタチ」
叫びたくても叫べない指標が、ただ心の中を焦がして渇かす。もっとだ、もっと、あの頃と同じように……“俺達に誰かを救わせろ”。
「へっ……小声で上げちまおうぜ、なんて御大将なら言うだろうな」
誰かが吹き出す。ああ、黒麒麟ならそんな事を提案しやがるだろう、と。
「そんで副長とか俺
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