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乱世の確率事象改変
首無き麒麟は黒と出会い
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天に大切な言葉を教えようと決める。

「陛下、一つの言葉を……私の覚悟の証として、聞き届けてください」

 これから自分も彼らのように在れ、と願って。
 頷いた劉協に、優しい微笑みを向けた。瞳には、嘗ての自分よりも大きな意思の輝きを宿して。



『乱世に華を、世に平穏を』





 †





 待機を命じられた以上は自分達の訓練を始める事も出来ない。彼らは手持無沙汰に、列を崩さずにそれぞれが口を開いて、いつものように話しこんでいた。
 当然、誰かが来るか何かしらの指示があれば黙して語らず規律を守るが、練兵場はがらんどうで誰も居ない。なら、如何に規律重視の彼らといえども話すくらいはする。
 昨日はどこそこに食べにいっただの、あの店の給仕が可愛かっただの、くだらない話がちらほらと。
 帝からの賛辞は心を高めて歓喜を齎したが、彼らは緩いのだ。彼が居た時からそうである。嬉しい事があったなら、しょうもない事でも笑い合いたがる。
 先程とは全く違う砕けた空気の中、最前列では第三の部隊長が宙を見上げていた。見る先は北、戦が行われているという官渡その方角。

「今頃よぉ……あの方は戦ってんのかなぁ」

 笑い声を背に受けながらの一言は部隊長の隣から。その男も同じようにその方角を見つめていたが故、何を思ってかは理解出来た。
 この二人は幽州にて、雛里の隣に居た者達。鳳統隊の中で一番精強な二人である。
 副長には届かない。第一、第二の最古参の面々にも届かない。しかし二人は残存する彼らの頂点に位置している。
 目を向け、じっと見据えた部隊長が口を開く。

「戦いたいかよ?」
「……ああ、戦いたいね。戦って戦って、殺して殺して……そうしなきゃ収まらねぇ。お前もだろ?」
「……まあ、な」

 ため息は同時。ギシリ、と拳が鳴るも同時。誰の為に戦いたいかなど、決まっている。
 自分達は、副長や先達を乗り越えたわけではない。転がり込んできた立ち位置。そんなモノに満足出来るか……当然、否。

「そりゃよ、皇帝陛下を守れるなんてのは、たかが一部隊の俺らにとっちゃあ最高に名誉ある仕事だと思うぜ? けど……」

 またため息を一つ。悲哀に暮れる瞳と、もどかしさを映し出す眉間。

「……そうだよな。くくっ、そうに決まってるよな」

 どうしようもない奴だ、と部隊長は思った。自分達の仕事場は、やはり此処では無いのだと感じた。
 地獄のような戦場で、命の輝きを煌かせ、想いの華を咲き誇らせる。何処かで戦っている者達がいる……自分達は……ただ街と絶対者を守るだけ。

「欲しいのは名誉じゃねぇんだ。人が、仲間が、戦友が、バカ共が死んで殺して仕事してんのによ、じっとしてるなんて……もう、嫌だ」

 苦
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