首無き麒麟は黒と出会い
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合に参加していた。振り返ってみればそんな考えが思い浮かぶ。
だから余計に、彼女は誰を責める事も無い。王の責務は任ぜられた地や血族の繁栄、そしてより良い平穏。例え他と戦ってでも、幾多の命を生贄に捧げてでも、身一つになろうと守るが責務。乱世が見えたなら、力を付けようとするのは至極当然の対応。
加害者の立場なら厳しく冷たい王の理を持つが、被害者の立場なら弱者の振りをする……それはどれほど、傲慢で愚かしい誇り無き王であるのか。
否、それは王ではない。華雄が守ろうとした誇り高き王では無い。霞が、詠が、ねねが、恋が守ろうとした優しい王様では無いのだ。
月は微笑んだまま、自分を守る為に戦ってくれた人々を想う。
徐晃隊を見てきたから、関われなかった兵士達にも懺悔を零して。
後ろで隠れて甘い蜜を吸う卑怯者……誰かの挑発の言葉は真理に等しい。国を廻す努力を知らない民から見れば、戦場で血みどろになって戦う兵から見れば、正しくその通りなのだから。
だから今も、月は誰も責めない。
その在り方を読み取って、劉協は感嘆の吐息を一つ零した。
「……余はそなたから学ぶ事がまだまだあるらしい」
つい……と目を伏せて、幾分の冷たさを取り戻した声が放たれた。
月は口を挟まず、儚げながらも力強さの宿る瞳で小さな皇帝を見据えた。
「こうして再び巡り合えた天命に感謝を」
祈るように、掌を胸の前で握った。
渦巻く思考には割り切れないモノも多々あるが、ふと、これから月がどうするのかが気になった。
「月よ……余の侍女とならんか?」
今は秋斗の侍女であると言っていた。華琳の元に所属し続けるのだから、離れる事も無いだろう。それなら自分の側で仕えていろいろと教えて欲しい……そう願った。
哀しそうに月は首を振る。何故、と言おうとしたが、強い光を放つ瞳に圧されて言葉が詰まった。
「私が私として責を果たす為には、もう侍女ではいられません。助けたい人が増えてしまいましたから」
帝からの誘いを断る程に、彼女の心は誰かの救済を望んでいる。それが出来る可能性があるなら縋り付き、また彼女は舞台に上がる。聡く裏を読んだ劉協はしゅんと落ち込むも、何も言わずに続きをまった。
「今回の戦が終われば、私は“彼女”の下で乱世の舞台にもう一度上がります。この大陸に、皆が望む平穏を齎す為に」
――私の幸せは、繋がっていく皆の幸せが増える事。私の大切な人達が幸せになる事。
彼とほとんど同じだ、と嬉しくなった。
彼らとほとんど同じだ、と心が弾んだ。
詠と同じだ、と胸が温かくなった。
――私はずっと彼を食べていた。いつでもこの願いを持てるように……
頭に浮かんだ一つの言葉が、彼女の心に火を灯す。夜天の王は、蒼
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