暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
首無き麒麟は黒と出会い
[6/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
合に参加していた。振り返ってみればそんな考えが思い浮かぶ。
 だから余計に、彼女は誰を責める事も無い。王の責務は任ぜられた地や血族の繁栄、そしてより良い平穏。例え他と戦ってでも、幾多の命を生贄に捧げてでも、身一つになろうと守るが責務。乱世が見えたなら、力を付けようとするのは至極当然の対応。
 加害者の立場なら厳しく冷たい王の理を持つが、被害者の立場なら弱者の振りをする……それはどれほど、傲慢で愚かしい誇り無き王であるのか。
 否、それは王ではない。華雄が守ろうとした誇り高き王では無い。霞が、詠が、ねねが、恋が守ろうとした優しい王様では無いのだ。

 月は微笑んだまま、自分を守る為に戦ってくれた人々を想う。
 徐晃隊を見てきたから、関われなかった兵士達にも懺悔を零して。
 後ろで隠れて甘い蜜を吸う卑怯者……誰かの挑発の言葉は真理に等しい。国を廻す努力を知らない民から見れば、戦場で血みどろになって戦う兵から見れば、正しくその通りなのだから。
 だから今も、月は誰も責めない。
 その在り方を読み取って、劉協は感嘆の吐息を一つ零した。

「……余はそなたから学ぶ事がまだまだあるらしい」

 つい……と目を伏せて、幾分の冷たさを取り戻した声が放たれた。
 月は口を挟まず、儚げながらも力強さの宿る瞳で小さな皇帝を見据えた。

「こうして再び巡り合えた天命に感謝を」

 祈るように、掌を胸の前で握った。
 渦巻く思考には割り切れないモノも多々あるが、ふと、これから月がどうするのかが気になった。

「月よ……余の侍女とならんか?」

 今は秋斗の侍女であると言っていた。華琳の元に所属し続けるのだから、離れる事も無いだろう。それなら自分の側で仕えていろいろと教えて欲しい……そう願った。
 哀しそうに月は首を振る。何故、と言おうとしたが、強い光を放つ瞳に圧されて言葉が詰まった。

「私が私として責を果たす為には、もう侍女ではいられません。助けたい人が増えてしまいましたから」

 帝からの誘いを断る程に、彼女の心は誰かの救済を望んでいる。それが出来る可能性があるなら縋り付き、また彼女は舞台に上がる。聡く裏を読んだ劉協はしゅんと落ち込むも、何も言わずに続きをまった。

「今回の戦が終われば、私は“彼女”の下で乱世の舞台にもう一度上がります。この大陸に、皆が望む平穏を齎す為に」

――私の幸せは、繋がっていく皆の幸せが増える事。私の大切な人達が幸せになる事。

 彼とほとんど同じだ、と嬉しくなった。
 彼らとほとんど同じだ、と心が弾んだ。
 詠と同じだ、と胸が温かくなった。

――私はずっと彼を食べていた。いつでもこの願いを持てるように……

 頭に浮かんだ一つの言葉が、彼女の心に火を灯す。夜天の王は、蒼
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ