アインクラッド 後編
春告ぐ蝶と嵐の行方 2
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きたとあらば、連中がみすみす取り逃がすとは考えにくい。ならば情報を集めた後で再びシリカを襲撃するはずだと推測したのだが、どうやら的中していたらしい。それどころか、この男たちが俺のことまで喋ってくれたおかげで、俺が自分からシリカとパーティーを組んでいると明かす必要がなくなった。予想以上の結果と言っていいだろう。
「……そ。今日はイロイロ話してくれてありがとね」
「こっちこそ、すっかり奢られちまって悪かったな」
その後すぐに話は終わり、男二人は上機嫌で席を立った。出入り口が開くと同時に、俺はロザリアの顔を気取られぬようにうかがう。彼女は一瞬こちらに視線を向けると、すぐに振り返って、一番奥のスツールに座っていたハリネズミのような髪型の男とアイコンタクトを交わした。あれも一味か……と、俺は素早く男の顔を頭に刻み込む。
「ねえ、ちょっといい?」
すると左側から、わざとらしく媚を売る、鼻にまとわりつくような女性の声が響いてきた。
「……何か?」
俺が首を捻ってそちらを見ると、ロザリアが下品な笑みを浮かべながら、席を二つ、こちらに詰めてきていた。
「話し相手が帰っちゃってさ。ちょっと奢らせてよ」
「俺でよければ」
趣味の悪い真紅の口紅を塗りたくった唇を卑しく歪めた彼女に、俺は口の端を分かりやすく持ち上げて見せた。俺が社会で学んだ作り笑い。SAOに来てからはめっきり浮かべることの少なくなった表情だったが、表情筋がレシピを覚えていたようで助かった。
「ありがと。……一つ聞きたいんだけど、アンタ、あの《竜使いシリカ》とパーティー組んだんだって?」
「ああ、まあな。アンタも、広場のときの野次馬か?」
「ま、そんなトコ。でも、よくあの娘と組めたわね。競争率高いんでしょ?」
「……まあ、色々とあってな」
そう答え、儚げな笑みを意識して浮かべつつ、目の前に置かれたグラスに口をつける。「……何があったの?」と、予想通りの反応が返ってきたのを内心でほくそ笑み、しかしそれを顔には出さず、俺は十秒ほど考える素振りを見せた。そして、
「……誰にも言わないでくれよ」
と前置きしてから言う。
「……彼女の使い魔が、彼女を庇って死んだんだ。俺は、偶然そこに居合わせた。使い魔にそんなアルゴリズムが入ってるなんて知らなかったから驚いたが……それよりも、泣き崩れる彼女を見てたら、いても立ってもいられなくなってな……。《思い出の丘》のことを話して、一緒に行くことになった」
何が、「いても立ってもいられなくなった」だ。白々しい。自分の言葉に吐き気を覚えて、それを押さえ込むために、グラスの中身を一気に呷る。喉を滑り落ちるアルコール特有の熱さと
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