第6章 流されて異界
第105話 ドジっ娘メイド技能?
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せんから。
まるで睨み付けるように俺の瞳を覗き込んで居た彼女の挑むような視線が、ほんの少し和らいだ。
そうして、
「本当に、本気なのか、冗談なのか全然分からないんだから」
……と、まるでため息を吐き出すようにそう言った後、きつく右手で掴んで居たネクタイを解放する。
うむ、これで大丈夫。先ほどまで感じて居た妙な感覚。何かが少し気に入らない。不機嫌になる寸前のような微妙な感情は既に消え、普通の状態へと移行して居ますから。
外見及び人間としての能力は非常に高い。更に躁鬱が激しくて感情に振り回されがち、と言う黒き豊穣の女神シュブ=ニグラスの依り代にぴったりの器。本当に、最悪の神に選ばれて仕舞った彼女。
「何よ。未だ、何か文句が有るって言うの?」
憐憫……。おそらく、何故、このタイミングでそんな瞳で見つめられるのか判らないであろうハルヒが、彼女に相応しい調子で問い掛けて来る。どうにも判り難い反応。ただ、語気、及び、彼女の表情から判らない、彼女の心の深い部分では別に不機嫌なようには感じられない。
何にしても通常運転中の彼女。既に、元々座って居たパイプ椅子に腰を下ろしたハルヒが少し上目使いに俺を見つめている。
柔らかなまつ毛に守られた双眸は大きく、腰まである長い髪の毛が艶やかに流れる。
「あのな、ハルヒ」
上目使いの少女に惑わされた……訳ではないと思いますが、それでも思わず言葉を発して仕舞う俺。結論。矢張り俺は甘すぎる。
ただ……。
「一昨日も言ったように、何か。普通では考えられないような厄介事に巻き込まれたら俺を呼べ。絶対に助けに来られるとは限らない。それでも――」
万難を排してもオマエのトコロに辿り着くから。
言葉を最後まで口にする事はなかった。しかし、おそらく彼女には伝わったと思う。
その言葉を聞いた瞬間、何故か彼女は少し不満げな表情を見せた。そうして、先ず、何を言っているのよ、……と、少し呆れたような表情と口調でそう前置きをした後、
「一度信じてあげる、と言った以上、あんたの事は最期まで信用するわよ」
……と続けた。
もっとも、その彼女が俺の言う得意教科の事を信用して居なかった、などと言うダブルスタンダードをついさっきまで犯していたような気も……。
そう考え掛けて、少し考える方向を変えて見る俺。
こいつ、俺……と限った事じゃないけど、誰かに勉強を教えて見たかったんじゃないのか、と言う方向に。
どうも俺の周りには昔からそう言う種類の女の子が集まり易かった。何と言うか、かなり頼りない風に見えるようで、同い年の女の子どころか、年下の女の子でさえも俺を弟扱いにする時が有りましたから。
更に、この部室に
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