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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
26.Jury・Night:『Blade Arts』
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た最愛が二機の駆動鎧を相手にしている。しかしやはり、向こうも多勢に無勢でかなりの苦戦を強いられている。
 せめて、フレンダが居てくれればまだやりようもあったが。そこは自業自得、無い物強請(ねだ)りなど無意味が過ぎる。

──そうだ。俺は……化け物だとしても、対馬嚆矢。それ以上でも以下でもない……!

 歯を喰い縛り、全身で気を取り直す。何とか回復した身体を、全霊で立て直す。まだだ、まだ闘える。死ぬまで、闘い抜く。闘わねば。
 せめて、この指揮官機だけでも討てば……最愛が逃げるだけの時間は稼げる筈。その程度の事はやらねば……

変態紳士(ジェントルマン)の風上にも置けねェ……ッてなモンだ!!」

 構える。馬鹿の一つ覚えの『合撃』の構え。『後の先』を期する合気剣、窮めた者は『相討ちこそ在れど、敗北はない』とされる一刀(けん)を。

『良い気概だ……ならば、武芸者として応えねばな!』

 対するは、『応無手突(オウブシュトツ)』。穂先近くを保持し、石突を地面に着く程に短く槍を構える。共に、反撃(カウンター)狙いだ。

「『────…………」』

 じり、と。牽制を交わし合う。共に狙うものが反撃である以上、先に動いた者が負けるのは明白。武芸者同士の闘いなど、単純明快。だからこその、雑じり気無しの純粋な実力勝負。
 懸念は、ただ一つ。()()()()()()と言う事。もしも今、横槍が入れば────敗北は避け得ない。最愛が敵を引き受けている間に、勝負を決める必要がある。

《だが、先に手を出せば此方の負け……いやはや、雪隠詰(せっちんづめ)じゃな。呵呵(かっか)!》
(……愉しそうだな、アンタ。此方は命懸けだぞ?)

 背後では、“悪心影”が嘲笑っている。耳障りな声色で、耳ではなく魂を震わせて。心底、嚆矢の窮状を嘲笑している。嘲弄している。
 本来ならば、向ける意識ですらも隙であろう。しかし、その不快に従って言葉を返せば。

《は? 勝負が命懸けなぞ当たり前じゃろうて? 武を競う、覇を争うとはそういうものじゃ。他に何がある?》
(……そうか、アンタは……)

 『命の価値などその程度』とされた時代の、本物の『武者』にして『魔王』だった事。それを思い知らされた。

《しかし、勝ち目なら在る。それは、ただ一つのみ……単純明快》

 耳許で、熱い唇が蠢いている。氷点下の舌で、舐め刷りながら。

(わらわ)()()()()()()()()()────唯一、それだけじゃ》
「────…………」

 その言葉。嘘偽りの無い、真実。導くように、『這い寄る混沌』の一つはそう、口にした。


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