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DAO:ゾーネンリヒト・レギオン〜神々の狂宴〜
第十九話
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  遥かかつて、岩戸に籠りし明き女神は、
  騒ぎと馳走に惹かれて自らを解き放った。

  即ち是暴飲の相也。
 
  神さえその法より逃るる事能わず――――

  その名は《暴食(gula)》。

  ――――《惟神》――――

    《暴食(Gula-Gluttony)》』」


 直後。

 一瞬にして、空を何かが覆い尽くした。

 それは、金色に輝いていた。矢じりと馬蹄を足して二で割ったような形状をしていて、U字型の隙間の部分には、《白亜宮》の少女たちの瞳と同じ、()()色の球体が浮いている。まるでそれが目であるかのように、きょろきょろと動いていた。

 ヴヴヴ、ヴヴヴヴヴヴ、という異様な音に、よくよく目を凝らしてみれば、その矢じり型の奇妙な何かの左右には、トリスアギオンの背中のそれと同じ色の小さな翅が生えていて、高速で震えているのだ。あれで、空を飛んでいるのだろうか。

 そして、トリスアギオンが号令を下すと同時に――――

「食らい尽くせ、《バァル=ゼブブ》」

 彼らは、一斉に地表をめがけて、一直線に落下を始めた。

 《それ》が激突した個所から、世界が真っ黒になって消滅していく。巻き込まれたプレイヤー達もそうだ。いつの間にか《白亜宮》の少女たちは一か所に固まって、半透明の障壁を貼って自ららを守っている。

 シノンの上にも、《バァル=ゼブブ》が落下して来る。

 消滅していくアバターの感触に、シノンは震えた。

 ――――これは。

 アンダーワールドで戦った、サトライザー/ガブリエル・ミラーの、底なしのねばりつくような闇とは違う。

 何もない、という点では共通しているが、あれは何かに飢えていたのに対して、これは違う。

 全てを、自らの意思で、抹消しようとしている――――


 それが、シノンがBoB会場で最後に行った思考だった。 
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