第3話
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ようにしてそんな事が出来る生物がいるか。など議論を呼んだ。
さて、いよいよ物語の時間がとてもゆっくりに、しかし着実に時を刻みながら、進んでいった。
ピ、ピ、ピ、ピ、と規則正しい電子音が室内を満たし、時折呼吸音が、シュコー、シュコーと電子音と共に奏でていた。
ここは、防衛省直轄の医科大学病院特別集中治療室の無菌室の一室である。そこにまだ幼い一夏が多数の各種医療機器に囲まれベットの上で目を閉じて眠っていた。その一室の外では、白衣を着た医者や看護師と共に一夏の姉である千冬と母方の祖父と祖母である円谷家の家族がいた。
「何で、目を覚まさないんだ、一夏!」
と、無菌室と面談室に挟まれた特殊ガラスに両拳を叩き付けながら千冬が叫んでいた。
その両手にそっと手を置き、優しく包み込むように高嶺が横に立ち静かな声で呟いた。
「きっと大丈夫よ。だって、お医者様もそのうち目が覚めるって言ってたもの。それに私たちの孫ですもの」
その声は、慈愛と安心感を持っていて千冬の気持ちを落ち着かせた。しかし千冬は、泣きながら、
「すみません、高嶺叔母様。でも、私は、心配でもし、お母さんやお父さんや妹のように…」
「心配しなくても大丈夫よ。だから、その顔をこれで拭きなさい、きれいな顔が台無しよ。」
とハンカチを差し出した。それを受け取り顔を拭き、
「うん、その方が千冬ちゃんらしくて可愛いわ。それと叔母様じゃなくて、叔母ちゃんでいいのよ」
と笑顔で高嶺が千冬に話しかけ、二人一緒に手を結びながら、一夏が眠っている病室の方を振り向いた。
その頃、円谷家の当主であり、防衛省のトップの一人である茂と医科大学のトップとの別室での話し合いが続いた。
「それで、何時私達の孫が目を覚ますんだ」
「落ち着いてください。貴方のお孫さんについて今から話そうとする所ですから」
と医務官の白衣の裾を掴み掛りながら茂は怒鳴ったが、医務官は落ち着いた雰囲気で諭すように話しかけた。
「まず、一夏君の様態ですが、今のところ目立った外傷と放射能や有害物質などの内部に目立った変化も確認されておらず、まったくの健康体と言っても過言でもないでしょう。しかしながら、報告にあったように隕石落下後のクレーターの中心部で発見された為に、万が一の事態に備える為に此処の重要施設での治療を薦めました。今の所変わった様子はありませんが…」
「なら、何で目が覚めないんだ!」
「これについては、未だに此方でも原因は不明としか判らないんです。ただ…」
「ただ、なんだ」
「お孫さんである一夏君は、今ある種の夢を見ている様なんです」
その一言の後、茂は落ち着きを取り戻し椅子にゆっくりと腰かけた。
一体どんな夢をみているのか?そしてついに、あいつ邂逅する。
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