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エクシリアmore −過ちを犯したからこそ足掻くRPG−
第十三話/SIDE-F 風が吹く理由
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る民を守ること」

 ……ああ、そうだったのね。だからなのね。この街に風が吹き続けるのは。

「力を貸してくれませんか。僕たちは、ナハティガルを討つという同じ目的を持った同志です」

 クレインさまが手を差し出した。
 アルを見上げる。「おたくの好きに」っていつもみたいに肩をヒョイってした。

 わたしの好きに。
 わたし、わたしは、クレインさまと――


 ひゅおん――――――ドスッ


 ――え?
 な、に。何が、起きたの。矢。そうだ。矢が、飛んで来たんだ。そんで、クレインさま、の、胸、左胸に、刺さ、って。

「っっクレインさまぁ!!」




/Alvin

 フェイの「治療」は、屋敷の中に場所を移して続いた。

「死なないで。ミラみたいに死なないで。おねがい、おねがい、おねがい、おねがい――――」

 フェイはソファーに寝かされたシャール卿に治癒を続けてる。何をどうしてるか分からんが、凄まじい集中力と気迫は伝わってくる。俺と執事のじーさんは黙って見守るしかない。

 俺はともかく、じーさんは回復系の術が使えないらしい。バーミア峡谷で見た限りじゃ一角の術者だと思ったんだが――
 攻撃術は一流で治癒術はレパートリーなし。兵士にありがちな特徴じゃないの。さてはじーさん、元軍人だな。

「…う……ぁ?」
「旦那様!?」

 じーさんがフェイの横に膝を突いた。フェイは笑った。「もう、ダイジョウブ」と。
 じーさんは深く深く項垂れた。安心したようにも、フェイに深く感謝したようにも見えた。

 クレインの目が開いた。

「もうイタイのない? ヘイキ?」
「ここ、は……僕は、一体……」
「旦那様はラ・シュガルの近衛師団の矢を受けて死に瀕する傷を負わされたのですよ」

 クレインの茫洋とした目がフェイに向いた。

「君が僕、を、救って、くれたの、か?」

 フェイは肯かなかった。背中が震えてる。おいおい、どうしたんだよ、フェ…… ! お前、泣いて。

「ック…ひ、っく…た…ぁ…かっ…ふ、ぅぅぅッ」
「フェ、フェイリオさん? あの」
「よ、よかっ、たぁ…っ、ク、クレインさま、い、生きてっ、て、よかったよぉ…!!」

 両拳をぎゅうぎゅうと両目に押しつけて、しゃくり上げるフェイ。泣くのを我慢したいのにできないって感じ。俺も傭兵なりたての頃、仕事が終わるたんびにこんな泣き方したっけなあ――

 クレインが起き上がって、恐々とフェイの頭に手を置いた。

「……ありがとう」

 顔から両手をどけたフェイは、目に涙を溜めたままクレインを仰いで――――綺麗に、笑った。

 満足? 喜び? どれとも違う。救われたのは自分のほうだと言わんばかりの。あなたが生
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