聖夜に捧ぐ『フローエ・ヴァイ・ナハテン』〜クロスクエスト〜
第七幕
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呼び出しに答えてきてくれたのだ。多少面倒臭そうな顔をしているのはこの際気にしない。というかそう言う性格の人だということは、四年も前に知っているし、そんなところも含めて彼の事が好きだから。
「悠牙君、クリスマスプレゼントです」
「おう?」
すすす、と彼の元へ近づいて、その手に小さなお守りをのせる。
それはちょっと西洋風の外見をした、しかし伝統的な作りのお守りだった。中にはきちんと護符も入っている。表には薙刀と音符のマーク。二年間を過ごしたあの浮遊城において、薙刀はユイナ、音符はユウガのトレードマークだった。
「一生けん命、作りました」
「おう」
「大事にしてくださいね」
「お、おう」
一言いうたびに、彼に少しずつ近づいていく。
「ちょ、ちょっと待った」
「なんですか?」
「あ、あのな……その……お返し、というワケじゃないし、というかそもそも俺はこっちを先にするつもりだったっつーか、というか連絡が来たのは都合がよかったつーか、それじゃお前を利用したみたいに聞こえ……ああああもうっ!!」
何が何だかさっぱり分からないが、とりあえず一人でもんもんと悩んだ悠牙は、ふいに懐から財布を取り出すと、中からなんと一万円札を取り出した。
「あ、あの、そんな大金……!!」
「良いんだよ。このくらいかけてカミサマの助力をいただかなければ……!」
何故か今どこかで、癖っ毛にマフラーの青年神がドヤァと笑った気がしたのだが、気のせいだったのだろうか。というかそんな知り合いいたっけ……ああ、クリスマスプレゼントを取り戻したくないか、と交渉しに来たあの《天宮》とかいう男の人か……というかなぜニヤリとかじゃなくて『ドヤァ』……?
そんなことを唯奈が考えている間、さい銭箱に一万円札を放り込んだ悠牙は、それからやけに長い間祈っていた。
そして祈り終ると、彼は至極真剣な表情でこちらを向いて。
「あ、あのな、唯奈」
「はい」
「その……こんなこと今さら言うのも何なんだけど……」
それから悠牙は、きっと精一杯勇気を振り絞って選んだのだろう、素敵な素敵な言葉を口にして――――
唯奈への、クリスマスプレゼントにしてくれた。
***
「MerryChristmas」
「メリー・クリスマスです!」
かちん、と音を立てて、グラスが弾かれあう。
衿希頗臨は、楽しそうな表情で笑う皇季桃華を見て、こちらまで嬉しくなって笑ってしまった。
クリスマス・イヴ。友人たちと買い物に出かけていた彼女が帰宅するのに、頗臨の《異世界》からのログアウトはギリギリ先んじた。結果、頗臨は彼女に、それ以前に起こっていた異常事態を察されることなく、桃華に「お帰り
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