聖夜に捧ぐ『フローエ・ヴァイ・ナハテン』〜クロスクエスト〜
第七幕
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しおらしく、そう聞いてみればよかったのに。
真夜美は素直にそう言えず、
「――――せっかく取ってきたんだから、受取っ!!」
「おわっ!?」
思わず和人をぶん殴っていた。
「もうっ! もうっ! この馬鹿和人!!」
「ご、ごめん! あの反応はさすがに悪かったって思う!
ホントのところ言うと……すげーうれしい。ありがとう、真夜美。俺も君を愛してる」
そう言って、何の気負いもないように唇を重ねてくるのだから――――
「……ずるい」
思わず、そう思わずにはいられない、真夜美であった。
***
「ふふっ、二人っきりのクリスマスも楽しいね、隆也」
「ああ」
クリスマスケーキを頬張りながら微笑む理奈を見て、隆也は微笑む。ああ何て可愛いんだろう。俺はこの笑顔を見れるだけで幸福者だ、と。
クリスマス・イヴ。SAO以前は友人たちと祝うことが多かったし、SAO時代はそもそも祝うことすらなかったと思う。去年はSAO事件以後の知り合いも含めた皆で祝った。
対する今年は、理奈と二人っきりのクリスマスだ。彼女も張り切ってケーキを作ってくれた。
二人前用の、小さなケーキ。その中に彼女の思いが詰まっているのかと思うと、もうなんか涙とか出てきそうになる。あ、ヤバイ……
「隆也? どうしたの?」
「いや……何でもない……」
思わず目頭を押さえる。
昔は、死ぬかもしれないような地獄――――不幸のどん底にあった。
今は、死ぬかもしれないような天国――――幸福の絶頂にある。
もし、昔の……地獄を経験している真っ最中の自分に、何か一言メッセージを伝えられるなら。
『諦めるな』
そう、伝えたい。
この幸福が、永遠に続けばいい――――
「理奈、クリスマスプレゼント」
「え? 何々?」
隆也は勿体ぶりながら、ちょっとイラつくほどきれいにラッピングされているプレゼントを取り出す。リアルに戻ってきて、ドロップしたのを確認した時点でこの状態だった。あの《天宮》とかいう男が、結局何をさせたかったのかはさっぱりだ。
だが――――
「わぁぁぁ……っ! これ、隆也と初めて会った時に巻いてたマフラーそっくり……! すごい! ありがとう!!」
「入手経路がちっとばかし怪しかったから不安だったんだが……よかった」
「うん!」
こうやって、喜んでくれている理奈の、満面の笑みを見れるのだから――――
自分は、本当に幸福者だ、と。
そう思った。
***
――――なんとか、間に合ったらしい。
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