聖夜に捧ぐ『フローエ・ヴァイ・ナハテン』〜クロスクエスト〜
第七幕
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「真夜美〜? 起きてるか〜?」
はっ、と目を覚ました時、最初に聞いたのは玄関の方から叫ぶ和人の声だった。あたりを見渡せば、そこはあの浮遊城にもにた異世界ではなく、慣れ親しんだ自宅の寝室だった。
夢、だったのだろうか。
あの奇妙な世界で戦ったのは。
「……違」
ふと横を見れば、一メートル少々の長方形の箱が、綺麗にラッピングされて置いてある。持ち上げると、予想した通りの重さ。真夜美が、和人のクリスマスプレゼントに選んだものが入っているとみて間違いないだろう。
ふと窓の外をみると、すでに夜だった。熱もいつの間にやら引いていた。
「真夜美?」
「……起」
「そりゃよかった」
ドアを開けて、和人が入ってくる。出かけていたのだろうか。ジャンパー姿だ。
「調子は?」
「大丈夫」
羽織っていたジャンパーを壁のハンガーに掛けながら問う和人に、真夜美は簡潔に答えた。
これからこのプレゼントを渡すのだ、と思うと、なんとなく緊張する。
「和人」
「ん? どうした?」
近寄ってくる彼にめがけて、倒れ込む。真夜美の頭が和人の胸に当たり、彼の表情が見えなくなるかかわりに真夜美の表情も和人からは見えなくなった。真っ赤になっているのを悟られずに済む。
「お、おい……」
「和人。
私は、あなたのことが好き。あなたのことが大好き。あなたのことを愛してる。
迷惑かけてばっかりかもしれないけど、それでもあなたのことを愛してるの。こんな体で、長く生きられないかもしれないけど。あなたの赤ちゃん、産めないかもしれないけど。結婚、できないかもしれないけど。本当は人間じゃない私だけど。
けど、私はあなたを愛してる。こんな私でも、あなたを愛していられる。あなたとなら、世界が終わるその時まで生きていける気がするの。
和人――――MerryChristmas.I Love you』
真夜美にしては本当に珍しく、ぶつ切りの語尾ではない言葉で、ずっとストレートに言えなかった感情をぶつける。
それと同時に、ラッピングされたプレゼントを、彼の手に預けた。
「真夜美……これって……」
「クリスマスプレゼント」
「いつの間に……あ、開けていい?」
「勿論」
和人が、ラッピングを丁寧にはがしていく。中に入っていたのはシンプルな箱。それを開けると、真夜美が彼に上げたかったプレゼントが姿を見せる。
それは――――剣だった。SAO時代の彼の愛剣と、そっくりなデザインの。
「……」
「……気入?」
「…………なんでや!」
おもわず、と言ったように叫んだ和人。
――――駄目、だった……?
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